第21話:よく考えたら母も魔法使いでした

ふっふっふー。


「ファイア!ウィンド!ウォーター!ストーン!ライト!ヒール!」


魔法の練習はなかなかに順調である。


秋から冬にかけて皆で解読した魔導書には初級魔術の使い方がこと細やかに記載されていた。


まず初めに私とヴァイスとエイルがそれを理解し、ファンとジェイル、リボルに実際に使って見せて何度も練習をした。


その結果、それぞれにあった属性の魔術は使えるようになっていった。


そして私は、なんと全属性!コンプリートである。


やったぜ!


リボルが火、ヴァイスが光、ファンが風、ジェイルが土、エイルが癒の属性に一致したらしく、初級魔法はそれぞれ成功を収めている。


個人的には今後の子供達の中に氷属性に一致する子が生まれてくることを願う。


私一人だとクーラーボックス程度の涼しさだ。


そう、全属性ではあったものの、火力はそんなに高くはなかった。


もちろん、訓練次第だとは思うが、ちょっと残念である。


そういうチート能力はやはり持っていないようだ。


さて、ではこの魔法の使い道だが、今のところ第一候補はアイスケーキである。


え?なんのって?かわいい弟のお誕生日だよ!


「フロージ!今回はアイスを作ったよ!一緒に食べよう!」


「にーに!アイス?おいしいの?」


「美味しいよ~一緒に食べよう!」


かわいい弟のために奮発して買った生クリームである。


美味しいに決まっている!


「にーに!アイスおいしい!もっと!」


「しょうがないな~にーにの分もお食べ?」


「カノイちゃん?フロージちゃんに食べ物を上げるときは?」


「あ、はい、ママに先に食べてもらう、です。」


「そうよね?まだ子供だもの。食べていいものか悪いものかはママが判断するってお約束よね?」


「ハイ」


しまった、試食してもらうのを忘れていた。


思わずしょんぼりと肩を落とすと、子供に甘い母は私をあやす様に抱きしめた。


「も~そんな顔しないの!フロージちゃんに美味しいもの教えてあげたかったのよね?偉いわ~独り占めしないで分け与えるなんて!」


「ママ!アイスしってる?ママもたべる?」


「もちろん知ってるわよ?ママにもくれるの?あら~優しい子!フロージちゃんもカノイちゃんもいい子ね~!」


ここだけの話、母の抱擁は話が進めば進むほどきつくなっていく。


つまり、苦しい。何なら痛い。


早く解放してくれ、頼む。


カノイ・マークガーフ、4歳、母の愛と弟への愛で押しつぶされそうになった冬の出来事である。

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