第14話:説明書って読む人間から見ると付けといてほしい

春の麗らかな陽気の中で、今日も子供達と遊んでいる3歳となった春。


誕生祭の最中にある違和感を感じた。


なんだろう、空中に三角形が浮いている。


右目の右端も端、小さな三角形はそこに浮いていた。


掴もうと手を伸ばすと何にも触れることなく空を切る。


と、瞬間目の前に大量の文字列が現れた。


これは……


「え、2進数つら。」


「カノイ様?どうかしたの?」


鬼ごっこの途中にもかかわらず、立ち止まった私に違和感を覚えたのか、逃げていたヴァイスが心配そうに話しかけてきた。


とりあえずタッチした。


「なんで!?ひどい!」


「大丈夫、だと思う。ちょっと眩暈がしただけ!」


元気よく答えて「じゃあヴォイスも鬼ね!」と伝えると苦笑いをしながらも周りを見回して獲物を探し始める。


後残るはジェイル一人である。


ジェイルは足が速いのでみんなで協力して捕まえるのが定番だ。


来年からはここにフロージと、ヴァイスの弟、シュバルツが加わると思うととても楽しみである。


シュバルツは冬の初め頃、引きこもり始めたあたりで突然生まれたらしく、リーベン家は大層大混乱だったらしい。


なんやかんやで出生報告をしに来る頃には落ち着いていた様子だ。


これからも下の子供達が多く生まれてくることだろう。


そう考えると領主の息子として、ちゃんと彼らを導いていかねばと改めて思う。




それはそうと、突然見えるようになった2進数について、考えなければ。


帰宅後、個室となった子供部屋に座り込んで考える。


2進数を読むには、正直めんどくさい。


それも大量だ。


とりあえず、見出しだけ読んでみることにしよう。




「えーっと……で、ば、つ、く、も、お、ど?……デバッグモード?」


デバッグモードって、あのデバッグモード?


プログラムを流している最中に変数を書き換えたり、プログラムを途中で止めたりする、あのデバッグモード!?


もしもそれが本当ならものすごい能力なのでは!?


しかし……使い方がわからない。


あれか、もしかして、全部翻訳して記入内容を変えていかなきゃならないのか?


め、めんどくせー!


そう考えている時にふと、先ほどの翻訳した2進数の一文を確認する。


「あれ?デバッグモード?」


その数値、だったものは”デバッグモード”という文字列に代わっていた。


理解すると翻訳される?……いや、やっぱめんどくさいな。


でも、これは心強い力だ。


生き残るために世界のバグを修正して生きていこう。


きっとそういう役割なのだ。この人生は。


そのために翻訳を……め、めんどくせー!


カノイ・マークガーフ、3歳、神様から面倒くさい贈り物を授かった春の出来事である。

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