第12話:収穫祭って大事に育てたものを収穫するんじゃないのか
前年は参加できなかったが、今年度は収穫祭に子供も参加していいということとなった。
というのも狩猟祭でここら辺一帯の魔物は狩り尽くしたらしく、比較的安全に収穫ができるから、らしい。
比較的安全に収穫?と考えるよりも先に父に連れられモンスターのいる森に連れてこられてしまった。
移動はさすがに抱っこだが、収穫は子供でも簡単に行えるらしく、森のど真ん中で地面におろされた。
狩り尽くしたといってもモンスターの住処である。
その臭気と死臭で吐きそうになる。
おえ、死にそう。
他の子供達は元気にその辺に生えていた大きな草を引っ張っている。
どうやらその葉が今回の収穫対象らしい。
と、落ち着こうと心掛けているととんでもない悲鳴が聞こえてくる。
「きゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
慌ててそちらを振り向くと大きな大根が……だいこん?
引き抜いたらしいファンはきゃっきゃっと喜んでいるが、その手にある大根には悲鳴を上げる人面のようなものが……あれ、マンドラゴラじゃね?
いや、マンドラゴラは悲鳴を聞くと死んでしまうと聞いたことがある。
じゃあ、マンドラゴラ、じゃない……?
そう考えを巡らせていると周りからは悲鳴の嵐が……。
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ぎいいいぃぃぃ!!!」
「ががががががががが!!!!!」
ジェイルは両手に人参を持ち、エイルは両手で巨大なカブを持ち上げている。
俺も俺もとリボルは小さなラディッシュを大量に掘り返し、ヴァイスはぬけかけのゴボウと格闘している。
そのすべてには悲鳴を上げる人面が。
私は静かに、そして頭をぶつけないようにゆっくりと倒れた。
「カノイ!?」
父の焦る声が聞こえる。
すみません父上、いやパパ。
私にはこの戦場は刺激が強すぎたようです。
目が覚めた時に食べたすまし汁はこの世のものとは思えない美味しさだったけれど、どこかこの世のものとは思えない地獄の様相を思い出させるのだった。
カノイ・マークガーフ、2歳、故郷の平和な芋掘りを思い出す秋の出来事である。
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