第9話:やることがない子供って何しているんだろう
こちらの世界にきて2度目の冬、窓の外が見えるようになってわかったことだが、この地方の冬はとても外に出れたものじゃない。
吹雪いている。
ものすごく吹雪いている。
扉の開け閉めさえ命がけなんじゃないだろうか。
そりゃあ子供も外に出さんわ。
大人でさえ命がけなことを子供がやれば死んでしまう。
当たり前のことだ。
やることもないので家の中の説明をしよう。
我が家は平屋の一戸建て、玄関2つ、リビング1つにキッチン1つ、トイレが6つ、浴場が1つ、寝室が16室、領主部屋が1室、客間が1室である。
その他に倉庫や離れに傭兵を雇うための小屋なんかもあるらしいが、今の私の行動範囲としてはこのくらいだろう。
使用人達には今のところ1人1部屋を与えているらしいが、それにしても寝室が多い。
現在1室は子供部屋に改造されているが、それもある分とりあえず作った感がすごい。
まぁ、「必要になったらまた立てればいい」とすら言っていたのでこれ以上に人を雇うのか子供を増やすのか……ちょっと怖くなってきたな。
別の話をしよう。
玄関が2つあるのは何かあった時の緊急脱出口として家の裏にもう一つの玄関があるのだ。
玄関といっても靴が置いてある程度で他に何もないのであまり近寄ることはないが、もし戦とか起きたらここから逃げればいい、という場所があるのは助かる。
いわゆる非常口だ。
大きくなったらここに食料と水を常備しよう。
いつこの平和が崩れてもいいように、というと不謹慎だが、災害や戦争は民草には何時起きるかなんてわからないのだ。
備えあれば憂いなし。
いつかは防災訓練も実施したいところ。
さて、家の紹介はそこそこに、家の使用人を紹介しよう。
家で働く使用人は5人。
メイド3人に執事が2人だ。
主にメイドが家事全般を行っており、執事は事務作業の手伝いや配給、客人のおもてなしを担当している、らしい。
メイドにはお世話になっているが、執事は偶に覗きに来て子供に癒されて帰っていくので深くかかわっているわけではない。
しいていうなら「かわいい~」という声援にお応えして笑顔を振りまく程度の付き合いだ。
まぁ、書類仕事なんか頑張ってくれているので存分に癒されて行ってほしい。
何時の時代も、事務仕事は目立たず重労働だ。
父が書類仕事が苦手な分、彼らが頑張ってくれている。
その事実は私が仮に跡を継ぐこととなったら引き続きお世話になるという点で忘れてはならない。
ちなみにメイド達は私の世話をだれがするかで壮絶なじゃんけん勝負を毎日行っている。
じゃんけん……転生者は恐ろしいものを残したものである。
では、それぞれの名前を紹介しよう。
メイド長のエミリー
メイドのリリア
メイドのイザヴェラ
執事長のアラン
執事のスミス
以上だ!
そういえば、父と母の名前も紹介していなかった気がする。
この際なのでそちらも紹介しよう。
父はスヴェン・マークガーフ
母はシシー・マークガーフ
そして私が長子のカノイ・マークガーフだ。
比較的覚えやすい名前で正直助かる。
前世では海外の愛称とかよくわからなかった。
あと苗字……ファミリーネームを持っているのは貴族や商人、それなりに身分のある人間だけらしい。
ということはである。リボルとヴァイスも貴族なのか?というとそうではない。
サリバン家は昔、国境沿いに現れた飛竜を射殺した家系の分家である。
そしてリーベンは神官の家系らしく、神事を執り行うため身分が高い。
他にも子供のいる家庭はあるが、主に率先して当主家の息子に関りを持ちたがるのはある程度身分のある家系が多い、ということだ。
いまだに顔を合わせたことのない子も多い。
いつか自分に仕えてくれるかもしれない子達だ。
早く顔合わせをしたいものである。
そのためにもこの冬を無事に越さねば。
カノイ・マークガーフ、1歳、まだ見ぬ部下に思いをはせた冬の出来事である。
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