第7話:え、転生者って1人じゃないんですか
転生者とは、異界の知識を持って生まれてくる人々の呼称である。
転生者は古くは建国前から存在しており、世界平和、技術革新のために多くの教えを人々にもたらした存在である。
転生者により季節や年月の数え方、技術の名称やちょっとした娯楽まで様々なものが持ち込まれ、今日の平和な世界が築かれている。
そのため、転生者は賢者と呼ばれ、親しまれているのだ、とか。
嘘だろ!?
転生者って普通1人じゃないのか!?
いや例外はあってもそんなポンポン生まれてくるものじゃないのではないのか!?
実際現代に存在しているとされる転生者は数える程度らしい、が、数える程度は存在しているそうだ。
私もその中の一人、ということは話を聞いて秘密にしておこうと思った。
だって私にはそんな知識とか叡智とかないぞ!?
できることといえばプログラミングくらいで、今生パソコンの存在しない時代では無力以外の何物でもないぞ!?
いわく、転生者は特別な力を持っていることが多いらしい、という情報は正直ありがたかったが、それ以外の点において、転生者という役職は荷が重すぎる!
というか多いらしいってなんだ、才能に気が付かないまま死んでいくやつもいるって感じか。
そうならないように何らかの力がないか探さねば……。
それはそうと、私は両親の教育の賜物で天才的演説をした1歳児、という設定で話を進めていくことにした。
最初は驚いていた父だったが、母の、
「こんな時のためにマナーの本を読み聞かせていた甲斐があったわ~」
という言葉に納得していた。
まだ見ぬ弟、妹たちよ。すまんが頑張ってくれ。
そんなこんなで生誕祭を乗り切った後、私は外の世界に繰り出し、リボルとヴァイスを引き連れ、村を見て回る生活をしていた。
家と家の感覚が広いこの村は隣の家に行くのも大冒険だ。
田畑に稲を植えているおばあさんに挨拶をしたり、狩りに出かけるという青年に干し肉をせびったりと子供らしい生活を心がけている。
リボルもヴォイスも初めは領主の息子というだけでついてきていたが、今では家の前を陣取り出てこいと騒ぎ立てるほど仲良くなっていた。
「カノイ!きょうはうちにこいよ!もりでとれたきのみ、たべていいって!」
「カノイさま!よめないほんがあるんだ!カノイさまのいえでよもうよ!」
「まぁまぁふたりともおちつこう。リボルのいえできのみをたべながらヴァイスのほんをかいどくすればいいじゃないか。」
そういえば二人とも納得して後ろをついてくる。
さながらカルガモの親子、いや、親ガモがいないな、アリの行列か。
そうして皆で木の実を食べながら本を読んで、紙を汚してしまって怒られるまでがセットである。
まぁ、子供のやったことと許してほしい。
カノイ・マークガーフ、1歳、ガキ大将になった夏の出来事である。
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