第1話:異世界転生って夢にあふれているのは無敵の人だけだよね
目が覚めるとベビーベットの上にいた。
正確にはベビーベットかどうかはわからないのだが、見回す限りに檻があり、自身の手が赤ちゃんの手になっているのだから、日本人として生まれ、現代を生きた私にはわかる。
異世界転生だこれ。
いや、まだ異世界かどうかはわからないのだが、布の質感が現代より悪い、非常に悪い。
正直ガサガサする。
現代の文明に慣れすぎていた昨日までの自分が恨めしい。
と、ここで私の前世について説明しよう。
私は田舎生まれ田舎育ち、都会に出たものの水が合わずにUターンで田舎に出戻りした生粋の田舎っこ。
職業は、まぁ、プログラマとしておこう。
少ない給料の実家暮らしで親からそこそこ甘やかされて育った独身30歳の男性である。
死因は……なんだろう、脳挫傷?もしくは焼死?うぅん、記憶が混濁しているが大体そんな感じだった気がする。
まぁ、こんな感じでごくごく一般的な、死因だけちょっと特殊なサラリーマン、それが私だ。
そんな私が異世界転生だとか選ばれしものだとかになれるとは正直思っていなかった。
だってああいうのって優秀な頭脳を持っていたり、人としてかなり徳の高い善行を行った人がご褒美にもらえるボーナスステージみたいなものじゃないのか?
個人的認識はそうなんだが、例外もあるのかな?
そんなことを考えていると、自分の母親?と思われる女性が現れる。
うん、美人である。
そして分かった。異世界ファンタジーものだこれ。
母らしき人物の髪色はオレンジ!目の色は緑と青をパレットで混ぜた途中のような色だった。
ファンタジーだこれ。
「あらあらかわいこちゃん、おめめが開いたのね?私がママよ~」
そういいながら彼女は手も触れることなく私の体を抱き寄せた。
つまるところ私の体が勝手に浮遊して、彼女の腕の中に納まった。
ファンタジー以外の何物でもないよこれ。
しかも魔法があるタイプのファンタジーだこれ。
やばい。
こんな世界に生まれてしまったってことはろくな死に方できないぞ。
だってこんな時代に魔法なんてあるってことは兵役につかされて魔法で燃やされて焼死とかいう前世もさながらの愉快な、いや不愉快な死に方しかできんぞ。
うん、自信がある。
この世界ではまともな死に方はできない。
吉井一人、0歳、早くも世界に絶望することとなった春の出来事である。
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