第四章 十二弟子との出会い編
第58話 オランチアの急昇級
オランチア達がグランドストリートのボスを倒したという情報は全国各地に広がっていた。
「あの子がマリエスを打ち倒したオランチアらしいよ。 見てる感じ、あんまり強そうな感じのする魔法少女には見えないけどね。」
私は久しぶりに道場に来た。 最近行って無かったから、顔出してみようと考えたからだ。
「オランチアちゃん、久しぶり!!」
グランドストリート討伐のミッションから途中離脱して以降、全く合わなかったシャトリエーゼが受付カウンターにいた。
「あっ!! 先生だっ!!」
私は彼女に手を振って、グランドストリート討伐に成功したことを伝える。
「私ね、組織に勝ったんだよ!!」
「オランチアちゃん天才!!」
先生は私が勝てたことを褒めにやってきてくれた。 私の頭を撫でる先生からは母性のようなものを感じざる追えない。
「これからも頑張ってね! 応援してるから!」
「うん、頑張るよ!」
「それと、オランチアちゃんに連絡が来てるよ。」
オランチアは今日、魔法少女二級になったことを携帯の連絡で伝えられた。 四級から二級という三級を通り越して、階位が上がるのはとても珍しいことである。 オランチアはそれだけ強い魔法少女として周りから認められたということだ。
「もうシャトリエーゼさんと同じ二級魔法少女かぁ……。 これからは友達みたいに話そうよ。」
シャトリエーゼは私にニッコリと笑顔で訓練員の試験のことについて話し始めた。
「実は私、この前の訓練員の試験で合格したことによって、一級魔法少女に昇格しました。 なので、オランチアちゃんの先生としてこれからもよらしくですね。」
シャトリエーゼはもう一級魔法少女になっていた。 私はせっかく、彼女と並べたと思ったのにもう抜かされちゃってた。
私とシャトリエーゼが会話をしていると、物凄い速さでこちらに向かってくる人がいた。 あの 紫色で統一されたハイレグの上にマイクロミニスカートと加齢臭の漂う魔法少女はあの叔母さんに違いない。
「ドコニちゃ~ん、登場ッ!!」
オランチアはドコニが来るとそっと素通りするようにその場を離れようとした。
「って、ぅぉい! 逃げんなよッ!!」
逃げようとするが、すぐに彼女は私を肩を掴んできた。 どうやら、逃げることは不可能のようである。
「あの……。 何か用ですか……?」
「お前のあのビーム今まで見たこともないような技だからよぉ。 気になって聞きに来たんだわぁ。」
「あーはいはい。 あれは私もどうやって、使えるようになったか分からないんで話せることはないです。」
いくら戦いで助けてくれたとは言え、このビームが夢の中で見た女の子に渡された力だなんて言えない。 ここは何とか相手せずに誤魔化していきたいところだ。
「私の技のことは内緒にしてくれれば教えても良いかな……。」
「うお、教えろよ。」
「この技は私の祖父から伝授されたものなんだよ。 この技は祖父がその人生を賭けて作り出した技……。」
私はとりあえず、なんとか誤魔化して嘘をドコニに吹き込むことに成功した。 今日はマスカリーナやセイント・クォーツと言った道場のB棟で魔法の稽古をすることにした。 ここはそれなりに強い魔法少女しか練習できないような場所であるが、グランドストリートのボスにも勝てるようになった今の私ならいけるだろ。
◇ ◇ ◇
オランチアは夜遅くまで稽古をやった後、そのまま自宅に帰る道に直行した。 帰宅途中、何か気配のようなものを感じたので近くを確認する。
「何かここにいたか?」
何か嫌な気配を私は若干、感じている。 冥獣王の姿になったマリエスの出す瘴気とは全く別のものであるが、生まれてきてここまで怖いオーラを肌身で味わったことがない。
「だ……誰……?」
オランチアは近くにある公園の外灯の前に誰かがいることに気づき、魔力を肉体に流入する。 オランチアが目線を向ける前方から足音と共に誰かがやってくる。
「オランチア、ミッケ!」
銀髪のカチューシャ髪の女の子。 私の前に現れたのは、あのお部屋で出会った人物である。 私はすぐにその場を逃げようと後ろを向く。
「私はあなたの信仰している宗教には入りたくないッ!!」
私はその場を逃げようとしたその時、真上から何者かが何者かが飛んでくる!!
すぐに私は防御の構えを取ったが、そのまま後ろに吹き飛ばされてしまった。
「ほぅ。 それなりの健喜さはお持ちして何よりです。」
私の前に現れた謎の人物。 声の低さ、体格から中年の男性であるということは安易に想像できる。 しかし、顔は魔力のベールで覆われており、顔を認識することはできない。
「うぅっ! なんなんだ……こいつらッ!!」
オランチアはすぐにその場を立ち上がり、戦闘態勢に入る。 こいつらの攻撃方法はまだ分からない。 まずはステッキで風魔法を撃とう。
「オランチアウインドアスプラッシュッ!!」
マリエスに勝ち、徐々に魔力量も上がっている私の攻撃魔法。 いくら、女の子(中身男だが……)だからって油断しないでよね!
「うむ。 オランチアの現状の魔力はこのくらい……。 特別強い力を持っているという訳では無いのでしょうか。」
男は私の名前を言い、何かを考えている。 もう一人の女の子の方はすぐに私に向かってきて魔動技で攻撃を仕掛けてくる。
「ナイトメア・ソーサラー。」
彼女が魔動技を唱えると、魔法陣が近くに出来上がり、その魔法陣から骸骨のような怪物の聖霊が私を取り囲むように周回してくる。
「こ、これはッ!?」
「オランティア。 君はもう負けたよ。」
私はすぐにその場を離れようとするが、聖霊が私の体に張り付いて私の体の自由を奪ってくる。 徐々に私の肉体に重りが加わるように重くなっていく。
「うわぁ……な、なんだ……これ……。」
オランチアはその場で仰向けになって倒れる。 少女と中年男性が私の方に歩いてきて、私に対して自身の身分を尋ねてくる。
「少し手荒でしたが、すいません。 私はあなたとお話の機会を得たかったのでこの場を狙っていました。」
男は私に対して深くお辞儀をすると、そのまま自己紹介を始めた。
「私の名前はピエール。 ペトルス司教と周りの者からは言われております。」
男は軽い自己紹介を終えると彼女を自分の方に来るように手招きする。 私は魔動技によって動きが封じられているためなのか、必死に魔力を込めてもこの聖霊を追い払うことができない。
「誰かああああああああああああああああああああああ!!」
私はすぐに近くに人がいることに賭けて大声で助けを求めた。 この二人は何も動揺もせず、私の方を上から見ている。
「おーっと、助けを呼ぶつもりですか。 元々あなたには本部にお越し頂きたかったので、このまま連れていくことにしましょう。」
男が手を叩くと私の視界が徐々に揺れて見え、そのまま周りが真っ暗になる。
私は何をされたのか分からなかったが、すぐに暗闇の中に放り込まれてしまった。
「うわぁ! なんだこれは!」
すぐに周りを見渡すとまるで集会でもするかのように十二人分の椅子が添えられた大きな円形のテーブルがそこにあった。
「うぇ! なにここ、怖いんだけど……。」
周りは真っ暗で唯一この大きなテーブルの中心部分に明るく光るランタンが置かれている。 どこかの部屋と思われるこの場所には入り口も出口も見る限りにはありそうにない。
「ねぇ。あんたが新しい十二弟子?」
出口を探し回るオランチアはテーブルの方から子供の声が突然聞こえたので恐る恐る振り返ると、そこには二人の子供がいた。 二人の子供はまるで不思議そうに首をかしげながらオランチアを眺めていた。
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