第47話 キリカの秘策
オランチアとキリカはビアンコを打ち倒すためにタッグを組む。 オランチアは残りの魔力を回復するための魔法水ビアンコの前に来るタイミングで飲んでいたため、まだ戦うことはできる。
「あのビアンコという魔獣者……相当強いぞ。 自分の持てる最大の力で戦い続けなければ絶対に勝てんぞ!!」
キリカは自身の全力を使って戦っている。 そのため、彼女の力は次第に尽きる。
もちろん、ビアンコも魔獣から超人的な能力を得たとは言え、人間……。 ずっと、魔力を消費すれば徐々に疲労が溜まって動けなくなるが、それでも体力的に魔力が尽きて倒れるのは私達の方が先になるだろう。
「お前らじゃ、私には勝てねぇよッ!!」
少なくともビアンコの魔力は私達よりも倍以上は多い。 そのため、持久戦に持ち込むことはできない。
「オランチア……。 マスカリーナが近くにいないようだが、どこに連れて行った。」
「一応、あっちの方の向こうまで連れて行ったよ。 他のチームの仲間が駆け付けてくれれば、いいんだけどなぁ。」
ビアンコの能力や技、戦闘スタイルをある程度、見破ったとは言え、状況的にこちらが不利な状況であることには変わりはない。 このまま、戦闘中に別のチームの仲間が駆け付けてくれるまで耐えるか、そのままこの場所から逃げ出すというのも手段には入るが……。
「おい、そこのガキ、ここから逃げ出そうと考えているな。」
ビアンコの足の速さが私達よりも速ければ逃げ出すという選択肢を取るのは難しそうではある。 この施設も暗く、広いため、どこに逃げれば良いかも分からない。
「やっぱり、ここで決着を付けなければならないのかッ!!」
私はこちらに攻めてくるビアンコの攻撃を避けながら次の魔動技を発射する準備を整える。 魔動技を使うには集中力は必要なものの、普通に使う魔動技よりも格段に強い威力を発することができる。
「パワフルウォーターセブンスッ!!」
マスカちゃんの使っていた魔動技だが、私も彼女から少しだけ使えるように教えてもらってた。 あまり使いこなせてはいないが、それでも私が現在使用することのできる唯一の水属性魔動技のため、炎を操る彼女には最適である。
「そんなヘボい攻撃じゃ、私の炎をかき消すことなんざ不可能ッ!!」
オランチアが作り上げた水の泡を魔法弾をビアンコは炎の風圧で消失させる。 オランチアが想定していた以上に魔動技の攻撃は通ることが無かった。
「うわぁ……!! 私が作った水の泡の攻撃が!!」
オランチアの攻撃を炎でかき消すと、彼女はオランチアに向かって炎の魔法エネルギーを発射してオランチアを燃やそうする。 炎の威力はさっきよりも膨れ上がっていって、大きな実験室であるこの部屋は徐々に火の海に変わっていった。
「うぎゃぁっ!? あっついよぉ!!」
ビアンコの放つ火炎を何とかギリギリでかわすオランチア。 ビアンコから離れた位置に逃げていこうと策を立てているようではあるが、中々逃げられないでいる。
(キリカちゃん、めっちゃ集中して力を溜めている……。)
キリカはオランチアがビアンコと戦いを始めたら二人から距離を置き、次の作戦の準備をしていた。
私だけにして一人で何を始めてたんだと私は思ったが、彼女の自分の力を溜めている姿には何か勝利への必勝法があると考えられる。 私は最後の賭けをキリカに任せることにしたのである。
(うぅ……。 こうなったら、全力でキリカが溜め技ができるまで時間稼ぎしてやるゥ!!)
オランチアの時間稼ぎはできるだけキリカから離れて相手の攻撃を避けるのに集中しながら、ビアンコを戦うというありきたりな手法である。
「うっぐッ!! ビアンコ強すぎィ……。」
しかし、ビアンコの攻撃は徐々に加速していくので中々、避けきれない……。
何か時間稼ぎしなくては……。
「あっリベアナのこと本当は知ってるよ!! ちなみに彼女、実はまだ生きてる……。 居場所は私のみが知りうるけどね。」
「なんだとッ!?」
ビアンコはオランチアの発言を聞いて動揺する。
戦闘中とは言え、大事な家族を人質に撮られている+今から殺そうと思っている相手しか情報を知らないと言えば少しは戦闘の時間を稼ぐことはできるだろうと考えた。
「てめぇを葬る前にどこにいるかだけは聞いておかないとな。 場所を今すぐ言いやがれぇッ!!」
ビアンコは更にキレた態度をオランチアに向ける。 オランチアは少しだけやれやれと言った態度で言葉を出す。
「まあ、今から数ヶ月前に郊外で金髪の魔獣者に出会ってねぇ……。」
オランチアはわざと単刀直入に言わず、くどい言い方でリベアナの行方を遠回しに語りだす。 その態度にブチぎれたビアンコはオランチアを睨み付けた。
「あぁ……。 やっぱ、いいわお前。 ここで失神させて拷問して妹の居場所吐かせてやるからここで意識失ってろ。」
ビアンコはそう言うと全速力でオランチアに殴りかかろうとしてきた。 あまりの速さだったのでオランチアも対応しきれず、そのまま彼女の重い一撃が飛んでくる。
あっ……。 やっば……。
「オランチア……。 お前の時間稼ぎご苦労様であった……。」
キリカは構えて溜めていた力を開放して一気にビアンコに飛んでいく。
まだ、オランチア達にも勝利の道筋が残されている。
ビアンコから逃げ回るように距離を開けながら攻撃を避けるオランチアはまだ自身よりも高い攻撃技を持っているキリカにチャンスを託していたのだ。
「さあ、私の力を全身に磨り尖らせろッ!! 体得の剛憲ッ!!」
キリカの切り札は身体強化の魔動技である。 自身の肉体に力と精神を集中して魔力を蓄えさせ、自分がよいと思ったところで使い切るというものだ。
しかし、使用してから基本的には数分までしか効果が無く、溜めている間は基本的に無防備になってしまうという弱点があるため、短期決戦を行う時に打って付けの技である。
キリカは開放した自分の力を最大限に使用してビアンコにもう一度切り裂かる。
「うぐぁぁ……!!。」
ビアンコはオランチアを追い詰めることに集中しており、キリカが何か自分の力を溜めているということには気づいていたものの、自身の戦闘力なら負けることがないという思いがそれと重なり合っていたため、キリカに隙を見せてしまった。
「うぐぐぐ……。」
キリカの切り札によって形勢逆転――
ビアンコはキリカの横からの強力な斬撃攻撃をモロに喰らってしまい、そのまま倒れ込みそうになった。 しかし、まだ戦う意思があるようでまだ私達に攻撃をするための魔動技を詠唱し始めた。
「まだだだ……。 こんな奴らに負ける私ではないッ……!!」
ビアンコはまだ残っている力を出して、私達に次の攻撃を仕掛ける。
キリカも次の攻撃を見切っていたため、次の斬撃攻撃を繰り出す。
キリカの鋭い剣裁きがビアンコの元に振り下げられると同時にビアンコも最後の抵抗と言わんばかりにキリカに炎の弾を顔面に向かって投げ飛ばしてその場を回避するかのように避けていく。
「うっぐぁッ!! やはり、まだ力が余っているなッ!!」
ビアンコはキリカの一振りから反撃の機会を手に取ったと言わんばかりに直接攻撃を仕掛けてくる。 ビアンコの魔獣者らしい姑息な悪あがきの前に魔法弾が撃ち込まれた。
「ぐはぁッ!!」
オランチアは魔法弾で吹き飛ばされるビアンコに向かってビームを放つ準備を始めた。 そう、あのビーム……。
「さあ……。 最後の仕上げだよん……!!」
オランチアは両手でハートビームを撃つ構えを取る。 オランチアの顔も体も服も全身が傷だらけだが、それでも笑顔の表情をする。
ビームによる攻撃を察したビアンコは身体に力を入れてオランチアから離れようとするが、既に重傷を負い続けたせいでまともに動くことができなくなっていた。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!」
オランチアのハートビームの力が溜まると周りから大きな圧が生まれたように部屋のものが壊れていき、そして巨大なビームがビアンコに向かって放出されたのである。
「いっけええええええええええええええええええええええ!!」
◇ ◇ ◇
実験室の地下。 巨大なビームが放たれたことにより、施設全体に地震が起きたような揺れが発生して、施設内で戦っている敵も味方も何が起きたのか警戒している。
「うおっと!? 地震かな?」
既に決着がついていたドコニとアリシアはグルグル巻きにして拘束したミャウを連れて施設の地下の中核付近まで辿り着いていた。
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