第46話 闘士の魔獣者
壁が崩れる音と共に青紫の長髪の女性が剣を振りかざし、崩れる天井の壁と共にビアンコに向かって落ちてくる。
「烈火斬!!」
彼女もこの唐突な真上からの攻撃を予測出来ず、キリカの姿を確認してそのままその場から離れようとしたものの、回避することはできず、モロに喰らった。
「ぐほぁッ!!」
血しぶきを上げて立ちよろめくビアンコ。
やはり、強力な力を持っている魔獣者。 そう簡単には死ぬことはないのだろう。
「ちくしょう!!」
キリカの斬撃は非常に強い。 生身の人間が真っ当に食らったら即死どころか遺体すらも形を残さずに消えそうな程の破壊力だ。
不意打ちを喰らい、大きく体勢を崩すビアンコ。 キリカはすぐに次の攻撃をする構えを取り、ビアンコに睨みつける。
「私の本気、見せつける時が来たッ!!」
しかし、斬撃を喰らい、フラフラと立ち上がりながらもビアンコは自信に満ちた表情を見せる。
「魔人剣ッ!!」
キリカは闇属性の技を剣に付与して雄叫びを上げて剣を振るう。 ビアンコはフラフラと立ち上がったが、自信のある表情をする。
【
ビアンコはキリカに切られるタイミングを見計らって次の技を繰り出した。
全身から炎のオーラを放つ魔法を発し、キリカを吹き飛ばす。
「うわぁっ!?」
炎の圧力によって吹き飛ばされるキリカ。
彼女の最後の切り札は全身から炎を発する魔動技。
「さあ、こっからが本当の戦いだぜぇ!!」
炎を纏い、斬撃で深い傷を覆っているのにも関わらず、彼女はまだ何事もないようにキリカに向かって走り始めた。
「くッ!! 簡単には倒せなさそうだ……!!」
キリカはまだ全身に深手になるような傷を負ってはおらず、体力にも余裕があるという合図をオランチアとマスカリーナに送った。
「マスカリーナ……。 死んじゃダメ……!!」
私はキリカとビアンコが戦っている内にマスカリーナの治療をするため、彼女の前にサッと近寄った。 彼女は自身の魔動技によって作り出した水の泡の中で浮いたまま意識を失っていた。 胸の部分からはビアンコの衝撃破によって切られた深い跡があり、そこから大量の血が流れ出ている。 水の泡も少しずつ赤色の血の色に染まってきた。
「マスカちゃん、今私が助けてあげるからね。」
水の泡の中に私は手を入れて、彼女を水の泡の中から連れ出した。 そして彼女の胸に自分の今持っている魔力を注入するように魔動技を使う。
【
シャトリエーゼから教えてもらった技を私は使い、彼女を癒す。 深手のため、中々回復までに時間がかかりそうだ。 しかし、キリカとビアンコは戦闘中……。
いつまで持つか分からない上に場合によってはキリカも負ける可能性がある。
「キリカさん。 頑張って……。」
オランチアはマスカリーナの肉体の回復に注力を捧げる。
キリカも炎の魔動技で苦戦を強いられており、勝利の行方はどちらの手に転ぶかまだ分からない状況である。
「なんていう力……。 魔獣者でもこれはかなり上位の戦闘力ッ……!!」
「ふんっ!! 所詮、魔法少女などこの程度……。 魔獣者の時代が到来することをとくと見るがいい……。」
最初こそ、キリカが優勢を保っていたが、徐々に追い返され始めてる気がする。
私も本当なら参加すべきだと思うが、マスカちゃんのことも心配だ。
「どうする……。 ここでキリカとの戦いに参加するのも手……。」
私はビアンコとの戦闘を終わらせてから、ゆっくりと彼女を治癒する手段も考えた。 キリカと一緒に戦えば、まだビアンコを止められるかもしれない。
「あっ!! そうだ!!」
私はとても良いことに気づいた――
その手段は――
「マスカちゃん……意識がないのは分かってるけど、人形にしちゃって大丈夫?」
今までに試したこともないが、致命的な傷を負っている人を人形にした場合、人形化を解除した時も元の傷を背負った状態で復活するのか試したことがない。
「うふふふ……。 今はぐっすりと眠っていてね。」
私はマスカリーナに向かってハートビームを当てる。
人形になったマスカリーナをそのまま、近くの安全な台の上に乗せてキリカのところに行く。
「戦う前に私も回復をしないと……。」
私自身にも回復魔法を使い、傷を癒した後二人の戦いにそのまま侵入する。
「オランチアか。 マスカリーナは無事か!?」
「ええ。 無事だよ。」
キリカは私という戦力が増えても依然と緊張した表情を私に見せる。
ビアンコも敵が二人になったところでこの戦いの勝者は私だと言わんばかりの態度を取る。
「おい。 お前らがどれだけあがいても私には勝てないんだよ。 それなのになんでこんな無駄な戦いを続けようとするんだ? さっさと死んだほうがマシだろ?」
ビアンコの態度も徐々に悪役らしい本性を見せるようになってきた。
しかし、ここで負ける訳にはいかない!!
「ふふふ……。 魔獣者さん? あなたは魔獣の力の恩恵でのし上がってきたのでしょう? でも、私達は自分の持っている実力で魔法を取得して魔法少女になったのよ?」
オランチアがいつもとは違う口調で挑発をすると、ビアンコはキレて怒りに身を任せた表情で今度は私に殴りかかってきた。
「やはり、速くなっている……。」
オランチアは何かに気づいたように攻撃を上手に躱すと炎が少しだけ吹かなくなった間合いに詰めてビアンコに殴打を加える。
「喰らえッ!!」
「うっぐッ!!」
ビアンコはオランチアに殴られてバランスを崩し、すぐに後ずさりをして炎の魔動技を使用した。 彼女の魔動技……。 ただ、火を放つだけの魔動技ではない。
「やっぱり、明らかにさっきよりも攻撃の火力や速さが上がっているのって魔動技の効果だよね?」
ビアンコはオランチアを煙たがらるような顔で睨む。
「おめぇ。 私の能力のことよく知ってるんだな。」
まあ、なんとなく動きが速くなって火力も上がってたからこう言ってみたんだけど、やっぱり私の勘は当たっていたってことだね。
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