第40話 本部のある街
遂に組織本部に私たちは派遣された。 グランドストリートの最後の討伐依頼は組織本部にどのように乗り込むか、そして制圧をするかが目標になる。
「ここからゎわてが先に行く。 お前らはわての後ろか近くのチームメンバーの横にいろよぉ。」
どうやら、ドコニは警戒自体はしているようだ。
何気に私たちのことを気にかけてくれているらしい。
「いつもよりもお人好しなんですわね。あの方。 いつもですと、配信のことでいっぱいになってしまいますのに……。」
アリシアはこっそりとドコニをディスる。
確かに今までの行いを考えれば、そう言われても仕方のないことなのだが……。
「まあ、機嫌が良いだけだと思う。 どうせ、本部に着いたら配信始めて戦闘の中継でも写すんでしょうね。」
マスカリーナもドコニを信用していない。 そのため、三人ともあの女性を疑いながら、後をつけている状態だ。 まあ、最悪の場合、近くに他の討伐隊のチームもいるし、そこに駆け込むのもありだろう。
「おい。 三人とも、そこを動くんじゃねぇぞ。」
ドコニは何かに警戒しているのか、急に足の動きを止めて近くを確認し始める。
警戒している動きは奇妙ではあるが、それでも特級魔法少女。
私たちも警戒を始めて、周囲を注意深く観察する。
――何かの音。
――少しづつ近づいてくる。
「ここくわぁ!!」
ドコニは大きな声で私たちに目掛けて物凄い威力の魔法弾を発射してきた。
「うわあああああああああああああああああああああああああああ!!」
私は突然攻撃を仕掛けてきたドコニに思わず、構えたが弾の速度が早すぎて避けることができなず、声を上げてしまった。
そして、飛んできた玉が当たる瞬間――
「ギュワォォオォォォオオオォォォォォォォォォ」
四本足で大幹を上手にずらしながら地面を這うように進む蛇のような頭と目。
何度切ってもすぐに再生することができるニョろっとした尻尾。
皮膚はサイケデリックな赤と黄色で覆われた爬虫類のようだった。
その姿に最も近しい生き物はトカゲであろう。
そして、私の目の前に現れた大きなトカゲのような生命体が魔法の弾を喰らって苦しんでいる。 まさか、ドコニは……。
「ふう……。 危機一髪だったな。 お前さん。」
ドコニは私たちの無事を確認してまたすぐに本部のあるとされる場所に向かって歩き始めた。
「きゃああああああああああああああああああああああああ!!!」
近くから悲鳴が聞こえた。 この悲鳴はどう考えても魔獣の悲鳴ではない。
人間の悲鳴だ――
私達はすぐに周りの状況を確認し、大変になっていることに気づく。
そうすると――
あのトカゲのような姿をした魔獣の群れが街の至る所にいる。 近くにいた騎士や魔法少女、魔術兵隊が血を流しながら食べられている光景。 もう既に殺され、体の一部が飛び出している物もあった。
「ひィ……!!」
「気をつけろ!! あの魔獣は超危険な奴らだからな!! 物凄い早い上にステルス能力まで保持している!!」
私とマスカリーナはすぐにステッキを取り出し、構える。
アリシアは重機とライフルを少し宙に浮かせて、攻撃する間合いを取る。
「すぐに攻撃するぞ!! あいつらに遠距離攻撃だあ!!」
私達はドコニの合図と共に攻撃を仕掛ける。
敵の数はとても多い。
私は今までの体得した遠距離攻撃を全て使い切るくらいには打ち負かしてやった。
「いっけええええええええぇぇぇえええええええええええええええ!!!」
ステッキの中に風魔法を込める。
私の力は徐々に増幅され、本来の魔力よりも強力なものになっていく。
「オランチアウィンドアスプラッシュ!!」
私自身が先生から教わったものを改良した技。 その威力は最初に道場で習ってきた時のものとは比べ物にならないほど強化されている。 同じ魔法の技、もとい魔動技であっても使う人間によって個体差がある。 熟練されていくと、初級レベルの技でも物凄く強くなるのだ。
「ギュワォォオォォォオオオォォォォォォォォォォ」
私の投げた風魔法によって体が引き裂かれ、魔獣達は悲鳴の声を出す。
どうだ!! 私も昔よりも強くなったんだぞ!!
「トリプル・シャーベット!!」
マスカリーナが私にとって最初の魔獣の討伐をした時に使用した必殺技をして、敵を殲滅する。 前に見た時よりもマスカリーナの使う技も明らかに威力が増していた。
「さあ、私の砲撃を見せて上げますわ!!」
アリシアも本気で魔獣を狩るために大量の爆撃と魔動の銃弾を大量に魔獣に浴びせる。 私達いつの間にかみんな強くなっている!?
「さあ、そろそろわての技も見せつけてやらんとなぁ。」
ドコニは両手を構えて、詠唱を始める。
遂にあの女性の技を拝見できる。
【
ドコニがそう唱えると、コンクリートから地響きと共に大木が突き出してきて、その大木の枝がまるでドリルのように回転して魔獣達の肉体の中を突き抜き殺していく。 私達が使う魔動技とは明らかに攻撃範囲が違う。
「すっごい技……。 これが特級……。」
オランチアがドコニの魔動技に見惚れていると、周りにいる残りのトカゲの魔獣はすぐに逃げていこうとした。
「逃がす訳がないんだよなぁ。」
ドコニはニチャリと笑うとその大木の枝を更に思いっ切り伸ばして逃げていこうとするトカゲの魔獣も含めて全員、その場で貫いた。
あの人の表情というか顔がちょっと気持ち悪いんだけど、強さは本物みたいだ……。
「結構グロい殺し方ですわね……。 助けられている身なので文句を言う資格はありませんけど……。」
とりあえず、あの魔獣を全滅させることができたとは言え、まだ近くに負傷者がいるのでそっちに行って、周りの人々の治療を行わなければならないそう……。
「それにしてもグランドストリートの本部付近は敵の強さが桁違いだな。 本部の中も非常に広そうだし、思った以上にグランドストリート解体は難しくなってきそう……。」
オランチアは今までの支部が割とあっさりと制圧することができていたので、この調子で本部も制圧して終了できると思っていたのだが、そんなに甘くはないことを悟った。
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