第三章 悪の組織グランドストリート編

第32話 拠点の攻め方

 A班の調査隊は関東区南部の拠点の情報を事前に収集していた。

ガクトの所属する戦闘剣士チームや他のチームは既に関東区南部の拠点に侵攻する準備を始めている。 中には既に拠点に上手く侵入した者もいるそうだ。

 しかし、ドコニチームはリーダーが生配信を行い周りの仲間に手間をかけていたので、まともな作戦を建てることが出来なかった。


「うえ~いぃん。 わてのグランドストリート討伐の活躍がついにはっじまるゾ~。 魔法少女の偉大な力とぉ敵組織の無様な最後に乞うご期待ォ!!」


 ふざけた女だ。 今からでもチームリーダーを交換したいくらいだが、一度決めてしまったリーダーの変更は本人が自分から変更届を出さない限り、不可能。


「ドコニさんは他のチームの人と一緒に戦いに行かないのですか? もう既に他のチームは戦闘準備が終わっているところもありますよ?」


 私は何回か彼女に危機感を積もらせようと煽るが一切彼女は耳にしない。

 それどころか無視する態度を取り続けるので、最終的には私とシャトリエーゼ、アリシアの三人で行動することにした。


「あのお方、私たちのことをほったらかして配信なんてやってますの。 人としてどうかしてますわ。」


「あの人は戦闘能力は道場で一番と言っても、過言ではないのですが人としてはダメダメなので……。」


 三人は他のチームの人と合流し、そこでどのような戦略を取るか策を練り始めた。

 


 グランドストリート関東区南部――



 まず、グランドストリートの拠点がある地区は一般市民が生活する普通の街である。 普通の行政が維持されており、インフラや教育機関も整っている。


 グランドストリートの構成員が潜んでいる可能性が高いのは、街から少し離れた場所にある住宅街や廃墟。 そして、仮に街の中に潜んでいた場合はビルの中に事務所を設けていると思われる。


「う~ん。 そうなると、やはり郊外に攻め込むということになるのかな?」


 オランチアは他のチームの人とコンタクトを取り、自分の思いついたことを周りの人と語っている。


「一般人として普段は生活をしている可能性もありますので、油断は禁物ですよ。」

 

 シャトリエーゼはオランチアに対して、普段以上の警戒をするよう促す。

 私も拠点のある区にそのまま行かず、頼れる戦士やチームがまだいるか片っ端から相談した。


「ねぇ。 ガクト。 私たちと一緒に強力しよう。」


 オランチアは少しでも安全に戦える状況を作るために戦闘剣士チームに入れてもらえないか交渉を始める。


「あの、先輩。 この三人、一緒に連れていって大丈夫ですか?」


「俺は個人的にそのチームリーダーが嫌だから他のところを当たってもらいたい。 このチームは剣技を中心にした連携戦術で戦いに挑むつもりだ。 魔法少女だと帰って足手まといになる。」


 サカトはそう言うと、私たちの協力を断ってきた。 別のチームにも声を掛けていこう。 次に声を掛けるのはレーモンチームだ。


「協力してほしいのか。 とりあえず、三人なら大丈夫だよ!! ついてきな!!」


 レーモンチームは七人のメンバーで構成される。 リーダーであるレーモンは魔術兵隊の一級。 現代武器と戦闘重機の多くを自在に操作できる戦士である。

 彼女は兵隊の服装はとてもカラフルでコスプレような作りになっている。

 女子高生くらいの年齢に見えるが、相当強いのだろう。

 

「あっ、三人とも私と同じ魔法少女さんだ!! よろしくね!!」


 同じレーモンチームにいた魔法少女の子が三人に自己紹介をする。

 彼女の名前はマスタースカッシュ。

 魔法少女の姿になった私と同じくらいの歳のロリである。

 髪の毛の色は黄色で服もオランチアの黄色版という感じでとても親近感が沸く。


「ねえ!! 私の妹になって一緒に暮らさない?(じゅるり……。)」


「お父さんとお母さんが許してくれたらね!!」


 これは新しい家族が増える前触れなのかな?

 もし、実現したら最高最高ぅぅぅううううううううううううう!!



「あの……オランチアさん? 口からよだれが出ててはしたないですわよ。」



◇ ◇ ◇



 そして、レーモンは協力者が三人増えたということで既存の戦略を少し変更した作戦を提案をした。

 作戦の内容は主にレーモンと同じく魔術兵隊のチーマとパーリック、カズキの三人が、監視役として街中を探索し、そこで得た情報をチームのみんなに知らせる。

 レーモンは怪しい人物を見つけたり、交戦が起きた時にすぐに駆け付けて応戦。

 レーモンのメンバーには騎士のナイキと回復役のリースがいて、その二人と一緒に四人の魔法少女がついていくということになった。


「なんか私たちの扱いが大雑把な気がするけど、どうやって戦闘を進めていくの?」


 オランチアは魔術兵隊という職業に詳しくないため、レーモンに少し問いかけた。

 レーモンの話によると、魔術兵隊はヒーラーのリース以外はみんなばらけて行動を取るものの、すぐに駆け付けることができるくらいの距離を常にキープしながら活動するという内容だ。


 街中で怪しい連中がいたらすぐに攻撃できる準備を整えておいてくれと……。

 つまりは自分の正体を隠しながら捜索するという刑事みたいなことをやりながら、戦っていくということね。


「あっでも、魔法少女の姿だと人目に付くからいつでも変身と解除を繰り返さないといけないよな……。」


 これってある意味、自分の正体を隠しながら変身を繰り返さないといけない……。

 つまりは敵に気づかれないように振る舞うのと、みんなに中身おっさんだとバレないようにいかないといけないってことじゃん……。


 うわぁ……。 試験の時よりもヒヤヒヤするぅ……。



――◆――


 現在のドコニチーム


 実質的にドコニのみ。

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