第19話 剣技(けんぎ)の特訓
私はキリカの指導を受けるべく、カッコよく竹刀を構えるポーズを取ってみた。
しかし、彼女は私のいい加減なポーズを見て𠮟ってきた。
「おい! そんなふざけた持ち方をしろと私は言ったか!」
「ふひ~ん……すいません……。」
すぐにキリカの言われた通りの持ち方に変えた。
「まずは私が竹刀を振るから、一緒に真似してくれ。」
「はい!」
私は言われた通りに竹刀を振ってみた。
剣を振ったことがなければ、竹刀も振ったことがない私にとって力の加減を調整するのは慣れるのに少し時間がかかった。
「どうだ? 少しは慣れてきたか?」
「はいん! さっきより振っていて肩に疲れがかからなくなりました!!」
キリカは私にとても素早い足さばきで振るところを見せてくる。
その姿はとても綺麗で、もしなれるなら自分もその技術を得たいと思った。
「さあ君もさっきより素振りや構えが良くなってきたことだし、そろそろ技の特訓に行くか。」
彼女は手を握ったまま、C棟にある鋼鉄の鎧で覆われた打ち込み台に向かって、竹刀を振りかざした。
【
「はあっ!!」
キリカは女性に相応しい高い掛け声を出し、魔力を込めた剣技で打ち込み台に叩きこんだ。
ドスンと重圧な金属音が周囲に鳴り響く。
しかし、鎧はかすり傷が付く程度でビクともしない。
「これが私の魔動技。 剣にバフをかけて攻撃する魔動技もあるんだ。」
「へぇ、キリカちゃんってまるで騎士みたいですね!!」
「まあ、私は魔法少女であると同時に騎士でもあるからな。」
「えぇ!!」
騎士、そして魔法少女……。 このキリカという子、才能に溢れているな。
騎士とは――
主に魔法能力に適性のある人間だけがなれる戦士である。
男性が主にボリューム層となるが、満10歳以上なら男女問わず入隊できるので魔法少女のように若い女性しかなれない戦士と違い、幅広い人達がいる。
また、他の戦士と掛け持ちすることができるため、騎士でもあり、魔法少女でもあるということも可能なのである。
――◆――
「す……凄いですね。」
「いや、別に私の友達でもそういう人いるから珍しくないよ。」
キリカの魔動技が見れたところで私もこの技ができるか試しにやってみることにした。
魔力を込めた打ち込みをするには、風魔法を扱う感覚で両手に魔力を集中しなくてはならないのである。
「せいッ!! やッ!! 安岩斬!!」
しかし、キリカがやったようなキレのある音も魔力が籠った一撃も披露することができなかった。
「両手だけではなく、腕にも力を込めるんだ!!」
「はいんっ!!」
その後も私はキリカに何度もダメ出しされながらもなんとか魔力を込めて竹刀を振り続けた。
しかし、彼女の扱う剣裁きには全く及ばなかった。
「はぁ……。 なんかあまり上手い打ち込みをしたという感覚は湧かないな。」
オランチアは竹刀を近くにおいて、水分補給をした――
「うむ……。 やはり、戦いのセンスがあるとは言え、見習いか。」
「はい。」
「オランチア。 君はまだステッキを使ったことがないのか?」
「実は素手でずっと戦ってきた武闘派魔法少女です!!」
オランチアにはまだ自分に合った武器がない。
魔法少女はステッキを使い、そのステッキに魔力を込めることによって素手で使う魔法よりも強力な魔法を使うことができる。
ステッキと言っても多様であり、中には家庭で使うような包丁をステッキの代わりにする者もいる。
「オランチアはどんな武器をステッキにしてみたい?」
「う~んと、やっぱり可愛くてキラキラしてるアニメの子が使っているようなものを使いたいかなぁ♪」
「つまり、カッコいい系はあまり好きではないということか。」
キリカは少し残念そうな顔になった。
私が騎士のように剣で戦う魔法少女になるという期待を彼女は持っていたのかも。
「あ、あぁ!! あの、可愛い系が好きと言ってもカッコいい系も同じくらい好きですよ!? クール系美少女が剣で戦うところを見ていて素敵だなぁなんて思っちゃいますし……。」
オランチアはキリカに変な誤解を生ませないように早口で説得しようとする。
(よく考えたら、こんな説得のやり方をする方が誤解を招きそうな気もするけど。)
「君が今後どんなステッキを使うようになるのか楽しみにしてるよ。」
「キリカさんにカッコいいと言われるようなステッキを見つけてきます!!」
オランチアはそう言って休憩を終えた後、竹刀を持ってまたC棟の中央に戻っていった。
「さあ、カッコいいオランチアになってみんなを惚れさせてあげる♡」
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