あの子が居ない

天川裕司

あの子が居ない

タイトル:あの子が居ない


「佳奈子ぉ〜!佳奈子どこ行ったの〜!」

夫「どうだ!?まだ見つからないのか!」


「ダメ!こっちじゃないのかも!」

夫「…こりゃ人呼んできた方が良いな…」


ある日、家族で川へピクニックに来た時、

いきなり佳奈子が居なくなった。


昔からおてんばで、

ちょっと目を離すとすぐどこかへ行ってしまう。

まだ8歳の佳奈子が今、

この河原のどこかに居ると思うと

一刻も早く見つけなきゃと気ばかりが焦ってしまう。


夫「落ち着け!とにかく誰か呼んでくるんだ」

「う、うん…」

そう言って夫は私をそこに残し、

さっき河原の向こうに居た人たちを呼びに行った。

とにかく一緒に探してもらって

少しでも人手を多くして、

佳奈子を見つけることだけに専念する。


でも…

夫「ダメだ見つからない!」

夫はすぐに帰ってきて私にそう言う。


「え、見つからないって、さっき居た人たち?」

夫「ああ、もう帰っちゃったのかもしれん!」

「…え?だってさっきまでワイワイ騒いでたのに」

すぐ帰るような雰囲気じゃなかった。


向こうでも子供が遊びまわり

3家族ほどが一緒になって河原の向こうに居て、

バーベキューを焼いたりして居たのに。


それに時間から見てまだ昼過ぎ。

ピクニックに来たんだからこれから遊ぶ時間で、

まだ帰るような時間じゃない。


「どうして、こんな時に限って…」

夫「と、とにかく探そう!俺たちで佳奈子を探すんだ!」


それからまた夫と2人で探し回った。

夫「佳奈子〜!どこだ〜!出てこい〜!」

「佳奈子ちゃん〜!どこに居るのぉ〜!」


(画面が変わって)


「早く救急車!」

「もう呼んだよ!」

佳奈子「グス…お父さん、お母さん!」

「佳奈子ちゃんだったね?大丈夫だから、きっとお父さんとお母さんすぐ治るからね」

佳奈子「グス…うん」


向こうに居た人たちが来てくれて、

お父さんとお母さんを助けようとしてくれた。


私が川の浅瀬で遊んで居た時、

「ご飯よ〜」と言って私の名前を呼び

こっちへ来てくれようとしたお父さんとお母さんが

多分滑ったんだろうか。

川の中に倒れて動かなくなっちゃった。


とにかく治ってほしい。元気になってほしい。

…さっき、お父さんとお母さんが

私を呼ぶような声がしたから、

きっと治って元気になってくれるって信じて居ながら。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=hl8KUnrs4Qs

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あの子が居ない 天川裕司 @tenkawayuji

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