クラスの嫌いな女子を学校で1番モテる女子にする方法

@Contract

第1話 嫌いな奴ら

金曜日の午後、部活動の音と夕日が図書室を僕は不機嫌に暇そうにしている彼女の隣で本を読んでいた。


金曜日の午後と言えば大人も子供も、明日から訪れる幸福な2日間の幸せを想像してウキウキしているが僕は毎週のこの時間とこの日が憂鬱だった。


多分それ彼女にとってもそうだと思うけど。


目を彼女に移すと、不機嫌にぶつくさと何か言いながらスマートフォンを弄っている。


僕は昔から物語が好きで、物心つく頃には既に僕はテレビのアニメが始まれば走ってテレビの前に座り、終わるまで絶対に動かなかったらしい。


大体の人は小学校、中学校、高校と進むごとにそれらの夢物語を描いた創作物から離れ、人との関わりや部活に勉強といった物に時間を優先し徐々にそうゆう物とは疎遠になっていくと思う。


だが僕は大体の枠の中に幸か不幸か納まらなかった。

歳を取るごとに作品の輪郭と表面しか見えていなかった物の中にさらに深い物を見つけられるようになり、比例するように大きくなる好奇心の赴くままに膨大な時間を掛けて沢山の作品を見るようになっていた。


ただ僕はこんなそんな時間が何よりも最高でたまらないのだ。


ストレスの大半を僕は人間関係からくると思っている。


「またあいつ匂わせ投稿してんじゃん」

「取られたくないからって必死すぎでしょ」


いま隣でぼやく彼女がいい例だろう。


殆ど僕と彼女は会話を交わしたことがないが、僕は彼女が嫌いだ。

スペックのいい者同士で群がって、必死に楽しそうなことをアピールしながらクラスでのありもしないカースト上位組を目指し、恋や友人関係を充実させて様々な学校イベントを楽しんでいるかと思えば聞こえてくる。

そのくせ友人同士で互いの陰口を言っているのだから訳が分からない。


好きだ嫌いだと恋のまねごとをしてはまるで磁石のようにくっついては離れて互に反発しあう。


だから僕は裏切も失望もしない物語が大好きだ。

作品を観ているその瞬間は僕はその世界の中にいてワクワクして、全てがどうでもよくなる。


だから今のこの時間の憂鬱などこのまま作品の中で過ごせばいい。

そう思い本に視線を戻そうとすると、飽きたのかこれ以上観たくなかったのか。

スマホの電源を落とすと少し乱暴にポケットに突っ込んでこっちを向いた。


「山本はさ、なんでずっと本なんか読んでんの?」


本なんかとゆうフレーズに少しムッとするが、スルーするメンタルも反論するするのもめんどくさいのでそこは流すことにする。


「楽しいからな」


「そんなのより友達と遊んだりとか、恋とかした方が楽しいでしょ」


「俺はそんなのよりこっちほうが楽しいんだ」


「そんなの何にも楽しくないじゃん」

「萌えーとか言いながらカワイイ女の子観ているニヤニヤしてるんでしょ?」


彼女は言葉に少し苛立ちを見せる。


「その通りだ、俺はカワイイ女の子が居れば、デレデレだってニヤニヤだってする」


「キモ」


「でも誰にも迷惑なんか掛けてないし俺の自由だろ」

「それに恋も友情も本や漫画で十分味わえる」


「そうやって全部知ってますみたいな感じが腹立つのよ」

「高校は人生で一回しかないんだよ?本物の友情も恋も味わったことのない人間が恋と友情の何が分かるのよ」


普段は適当にこの手の話題は流すけど、好きなものと自分を侮辱されて冷静ではいられない。


「陰で悪口を言って都合が悪くなれば手のひらを返す友情ごっこに、くっついては離れる青春ごっこよりはこの本の方が100倍勉強になる」


少し言葉に詰まるが、それでもなお彼女は反論する。


「確かにそんな時もあるけど、お互に傷つけて幼稚な恋をして、少しずつ大人になっていつかはそれも最高の思い出になるの!」

「本とかアニメを観てこの現実で何が残るの?いま私たちがいるのはここなんだよ?」


「別に僕はこの世界には興味はないんだ」

「それに白石さんはマンガやアニメを理解していない」


ため息を吐いてバタンと本を閉じて机に置く。

少しの静寂。


「何よ理解していないって?」


怪訝な顔を浮かべる彼女に僕は、大きな声で宣言する。


「アニメや漫画、ラノベは世界を変える!」


「何言ってるのよ。バカも休み休み言いなさい」


少し身構えていた彼女は呆れるように言う。


「なら証明してやる、何か条件を言え」


「望み?そうね…」


少し俯き考える。


「あんたが女子からモテモテになる」


「それは却下だ、休み時間にラノベを読めなくなる」


「じゃあ私をモテモテにする」


「…以外とメルヘンだな」


「うるさいわね。それくらいしか思い浮かばなかったのよ」


「分かった。その願い叶えてやる」


「現実を何も知らない。ましてや興味もないあんたに出来るわけないでしょ」


「創作を舐めるな、これでそいつがお前に惚れたら今日の全てを謝って貰う」


「望むところよ」


「言ったな」


「絶対に無理だともうけど」


バカにするように笑う彼女を軽く睨む。

今に見ておれ、貴様も立派なオタクの一員にしてやる。


「じゃあ早速いくぞ」


「行くって…?」


キョトンとする彼女の手を引っ張り答える。


「俺の家だに決まってるだろ!」

「今日は金曜日だから二日近くお前にアニメとマンガを1から一気に勉強させてやる。寝れると思うなよ」


ニヤリと笑みを浮かべる俺とは反対に、彼女は体を震わせる。


「おめーは常識から学んで来い!」


パチンと気持ちのいい音が響いた。




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