マイラの提案

 パティとマックスたちが、やっとの事で城下町に戻ると、冒険者協会の受付嬢であるマイラから《ボイス》の連絡がはいった。


〔パティ。仕事がひと段落してからでいいから、冒険者協会に寄ってくれない?〕


 パティの脳裏に、マイラの優しい声が響く。パティは嬉しくなって、マックスたちと一緒に冒険者協会まで走った。


 パティが冒険者協会のドアを開けて中に入ると、驚いた顔のマイラがいた。


「あらパティ。教会建設の依頼に何か不備があったの?もう帰って来ちゃって」


 マイラによる依頼書の説明では、教会の建設は、早くても一カ月はかかるという事だった。だがパティの友達のチャーミーとピンキー、マックスとアクアの活躍でたった一週間で教会が完成してしまったのだ。


 パティたちがあまりにも早く帰って来たので、マイラは驚いていたのだ。


 パティはチャーミーたちのおかげで仕事が早く終わったと説明すると、マイラは感心した顔になった。


「ねぇパティ、皆。よかったら今日は私の家に来ない?明日にはデイジーも依頼の仕事を終えて帰ってくる頃だし」

「えっ!デイジーも帰ってくるの?!マイラとデイジーと一緒なんて嬉しい!」

「えへへ。女の子たちだけでパァッとやりましょう」


 マイラは冒険者協会の裏手にある小さな家で一人暮らしをしていた。マイラの両親は城下町から離れた町で暮らしているらしい。


 マイラは一人暮らし気楽さから、依頼から帰ってきたデイジーを家に招待しているのだ。


 パティとマックスたちはその日、マイラの家に泊めてもらった。パティは申し訳なくて、ソファで寝かせてもらおうとしたが、マイラは笑ってパティをベッドに入れてくれた。


 マックスはベッドの下に毛布をしいてもらって寝た。チャーミーとアクアはマイラとパティの足元で寝て、ピンキーはベッドのヘッドボードにとまって寝た。


 翌日の夕方、デイジーがマイラの家にやって来た。


「デイジー!お帰りなさい!」


 パティは嬉しくなってデイジーに抱きついた。デイジーは驚いた顔をしてから、パティをギュッと抱きしめてくれた。


「もぉ、パティ。びっくりするじゃない。マイラったらひどいわ、《ボイス》でパティがいる事知らせてくれたらいいのに」

「へへん。デイジーを驚かせようとしたの!どう?驚いたでしょ?」

「はいはい。すごく驚きました!」


 デイジーは笑ってリュクッサックからお土産のお菓子を出してくれた。マイラの家にやっかいになる時は必ず持参しているらしい。


 その日の夕食はとてもにぎやかだった。マイラもデイジーも楽しそうにキャラキャラ笑っている。


 パティは小さい頃から、女の子のお友達がいたらどんな話しをするのだろうといつも想像していた。


 自分の目の前には、姉のデイジーと友達のマイラがいる。パティは一緒になっておしゃべりしている。その事がとても嬉しかった。

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