受付嬢マイラ

 親切な受付嬢はマイラと名乗った。パティがマイラさんと呼ぶと、彼女は笑ってマイラでいいと言ってくれた。


「私パティの事気に入っちゃった。もちろんピンキーたちもね」

「ありがとうございます。ピンキーたちも喜んでます」

「うふふ。ねぇ、パティに目印をつけてもいい?」

「目印ってなんですか?」

「私の魔法はね、《ボイス》っていうの。どんなに遠く離れた相手にも声を届ける事ができるの」

「わぁ!すごい魔法ですね!」

「事務職につく人はこの魔法が多いのよ。私のママもそうだったし。だからね、私がパティに目印をつければ、何かあった時、パティに私の声を届ける事ができるわ」

「本当?!よろしくお願いします!マイラ」


 マイラは微笑んでパティに目をつむるように言った。パティがそのようにすると、おでこにマイラの手が触れた感覚がした。


「もう目を開けていいわよ?パティ」


 パティはキョトンとしながら目を開くと、マイラは黙って微笑んでいた。


〔パティ、私の声が聞こえる?〕

「わぁ、マイラの声が聞こえます!」

〔そう。私が魔法で話しかけているの〕

「すごい!」

〔本当は私が目印をつけるのは、各パーティーのリーダーだけなんだけど、私の友達とか気に入った子は目印をつけているの〕

「ありがとうございます。マイラ」

「どういたしまして。あら?」


 マイラはパティと普通に会話してから、パティの書類に目を通して言った。


「パティ、ドミノ村出身なの?」

「はい。私は孤児だったんですが、十五歳までドミノ村で過ごしました。どうかしたんですか?マイラ」

「うん。一週間前ドミノ村出身の二人組が冒険者登録をしに来たんだけど、感じ悪かったのよねぇ。一人は大柄で偉そうで、もう一人は痩せててこずるそうで」


 マフサとトマだ。パティは直感して顔を青ざめさせた。パティの顔色が変わった事に気づいたのだろう。マイラが心配そうに聞いた。


「パティ、知り合いなの?」

「はい。ドミノ村は人が少ないので全員知り合いです。私、マフサとトマにいじめられていたんで」

「まぁ!パティをいじめるなんて許せない!もしマフサとトマがパティに何かしたら私に言いなさい?とっちめてやるんだから!」


 マイラの剣幕にパティは目をぱちくりしてしまった。自分のために怒ってくれる人など、ジョナサンとチコリ以外いなかったからだ。パティはクスクス笑いながらありがとうと言った。

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