冒険者協会

 パティはキョロキョロと辺りを見回した。冒険者協会の場所がわからないので、人に道をたずねなければいけない。


 パティは小さな頃から村人たちにうとまれて育ったので、人と関わるのが恐ろしかった。唯一神父のジョナサンとチコリがパティの事を可愛がってくれた。


 パティは無意識にお年寄りを探していた。パティの目の前に杖をつき、買い物かごをさげた老女が歩いてくるのが見えた。


「あ、あの。道をおたずねしたいのですが、」

「まぁ、可愛いお嬢さん。どこに行きたいの?」


 老女の言葉にパティは一瞬固まってしまった。老女はパティの事を可愛いと言ってくれたのだ。パティはこれまで村人から、醜いだとか気味が悪いと言われ続けていた。ジョナサンとチコリは、パティの事を可愛い可愛いと言ってくれたが、それはパティの事を憐れんで言ってくれているのだと思っていた。


 パティはずっと自分の事を醜い容姿だと思っていた。パティはへどもどしながら冒険者協会の場所を聞いた。


「ああ、それならこの道を真っ直ぐ行って、大きな通りに出たら左に行った所だよ」


 パティは丁寧にお礼を言って老女と別れた。パティは肩に止まったピンキーと、ショルダーバッグの中にいるマックスたちに言った。


「ねぇ、皆。聞いた?おばあさんに可愛いって言われちゃった」

「キャンキャン」

「ニャー」

「プクプク」

「ピィピィ」


 マックスたちは口々にパティは可愛いと言ってくれる。パティはケラケラ笑って答えた。


「ありがとう、皆。あなたたちもとっても可愛い!」


 マックスたちに出会う前のパティは、自分の事を好きになれなかった。村人たちに散々うとまれていたから、きっと自分はとても嫌な女の子なのだろうと思っていた。


 だがパティは神さまからマックスたちを授けられ、マックスたちがいつもパティの事を大好き大好きと言ってくれるので、パティは自分の事が少し好きになれるようになった。


 パティは胸がドキドキしてきた。これまで自分が暮らしてきた環境が一変する予感がした。老女の言う通り、大きな通りを左に曲がった。


 城下町の入り口は食材や土産物屋が多かったが、ここは旅人の日用品を売る店が多かった。鍋やナイフ、それに武器。パティはドキリとした。


 冒険者になると言う事はそれだけ危険がともなうのだ。


 旅人向けの店が少なくなる頃、その建物が見えてきた。冒険者協会は、年季の入った大きな木造家屋だった。冒険者協会の周りには剣をたずさえた屈強な男たちがたむろしていた。


 きっと依頼料のよい依頼を探しに来たのだろう。パティはゴクリとツバを飲み込んで冒険者協会のドアを開いた。



 

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