第2話 あかり、戻れなくなってしまう

前回の武装ぶそう少女しょうじょシュイラ!

昔から女の子として間違えられてきた牛崎うしざきあかりは、ゴミ捨て場で捨てられていたぬいぐるみを拾い、直してあげると突然動き出してしまった!?

ぬいぐるみは自分のことをチャーランと名乗り、あかりに武装少女にならないかと提案する。

半ば強制的に武装少女にさせられたあかりは、地球に侵略を始めていたシメン星人と戦うことになってしまう。

なんとかシメン星人は倒したあかりだが、この先どのような厄介ごとに巻き込まれるのか!?

次回あかりTSす 武装少女スタンバイ!!!


シメン星人を倒し、某カードゲームの次回予告を思い浮かべながら自宅に戻った。


「倒したわよ?」


「よくやったよ、どうやらぼくの見立ては間違っていなかったようだね」


見立て?チャーランは私に何か期待していたのかしら。


「それで?私を武装少女にした理由を聞かせてくれる?」


「それを説明するためには、僕が武装少女を作った理由から話さないとね」


その後チャーランから武装少女について知ることが出来た。

まず、武装少女はチャーランが地球に向かう宇宙船の中で独自に開発したものだった。

チャーランの母星であるレンチ星に宇宙海賊シメンが攻め込み、レンチ星は宇宙海賊の占領地にされてしまった。

母星から命からがら脱出したチャーランは取り残された仲間を救うべくレンチ星から、数年の月日をかけて地球にたどり着いたそうだ。


「あかりの家のゴミ捨て場にいたのは、宇宙船が途中で壊れて上空から落ちてきたからなんだ」


「宇宙船は壊れたけど、なんとか変身装置だけは持ち出せたよ」


「なるほどね」


武装少女のことはなんとなく理解したが、もう一つ質問がある。

武装を解除し、変身前の服装に戻っても何故か元の性別に戻らないのだ。

今はすでに変身して2時間以上が経過しており、自然に変身が解けるのを待っている。


「そういえばいつになったら変身が解除されるのかしら?」


「それが分からないんだ、体内の男性因子が元に戻らないと元の姿に戻れないからね」


え?戻れないの?

あまりの衝撃に一瞬固まってしまう。


「武装少女は女の子にしかなれないから、変身装置で一時的に男性因子を減少させて変身しているんだ」


詳しく聞いてみると、私の体内の因子は男性因子と女性因子の割合が、生まれつき半々の状態だったらしい。

そのせいで男性であるのにも関わらず、女性のような身体的特徴がいくつか現れているそうだ。

私の場合、肌や身長、声などがそれにあてはまる。

武装少女になる際には、私の男性因子を変身装置内の女性因子と交換させて変身しているため、体内の因子が元に戻るまではこの姿のままだそうだ。


「いや、どうすんのよ?紫姉が見たらなんて言われるか」


するとタイミングの悪いことに部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「あかりちゃん?さっきから騒がしいけど何かあったの?」


紫姉は私の姿を見て固まっていた。


「紫姉落ち着いて聞いて・・・この姿は」


「か、かわいい!!!」


すると紫姉は目の色を変えて、私の体を隅々まで調べ始めた。


「ちょ、ちょっとくすぐったい!」


「あかりちゃんのコスプレすごく似合ってるよ?これってなんのキャラクター!?」


どうやらコスプレと勘違いしているらしい。

そして紫姉の手が大きくなってしまった胸に触れてしまった。


「ちょっとそこは・・・」


「あれ?これ本物?」


そのまま胸を揉まれてしまい、思わず変な声が出てしまう。


「やっぱり本物だ・・・昨日までは無かったのに、これはどういうことかな」


「説明するから、手を離して・・・」


ようやく手を離してもらったところで、紫姉にこの姿の説明をする。


「武装少女とシメン星人だっけ?なんだか信じられないなぁ」


「確かに信じられないかもしれないけど、本当のことなの」


「チャーランだっけ?あなたはあかりちゃんに何をさせようとしてるの?」


紫姉はいつものやさしい雰囲気とは別の恐ろしい雰囲気をまとって話している。

こんなに怒っている紫姉を見るのは久しぶりだ。


「あかりにはシメン星人を殲滅してもらおうと思っているよ」


「そんなに危ないことに私の大切なあかりちゃんを巻き込んで、覚悟はできてるのかな」


二人とも一歩も譲らないせいか、部屋の空気がどんどん悪い方へと変わっている。


「ちょっと二人とも、喧嘩しないでよ!」


「確かに武装少女は半ば強制的だったけど、今は武装少女になれて良かったと思ってるの」


これは本心から言っていることだ。

誰だって自分が生まれ育った街を壊されたくはない。


「私はこの生まれ育った街が好き、駅前のケーキ屋さんも行きつけのスーパーもみんな大切なものなの!」


「この街を守れる力があるのなら、私はみんなのために戦いたい!」


普段の私なら絶対にこんなことは言わないだろう。

いつも流されてばかりだった気持ちが武装少女に変化したことで、素直に出せるようになった気がする。

私の必死の気迫が通じたのか、紫姉はいつもの雰囲気に戻っていた。


「そうなんだ、ごめんねあかりちゃん」


「分かってくれたならいいわ」


「それはそうと、あかりちゃんもしかしてブラ付けてない?」


「え?それはそうよ、さっきまで男だったんだから」


私の言葉を聞いて、再び紫姉の雰囲気が変わった。


「ふふふ、あかりちゃん女の子はね、必ずブラを付けないといけないんだよ?」


「別にこのままでも・・・」


「静かに!!!これはまたいちから教育しないとね」


この状態の紫姉を以前にも見たことがある。

あれは私と紫姉が初めて会った日だ。

紫姉は人が良さそうな雰囲気から一変し、私に女装をさせようと躍起になっていたことがある。


その後部屋の中で紫姉に体中を調べ尽くされ、紫姉はどこかに行ってしまった。

帰ってくる頃には様々な下着を手に持っており、脱衣所で服をはぎ取られると、無理やり下着を付けられてしまった。


「うぅ、もうお嫁にいけへん・・・」


「大丈夫、その時はお姉ちゃんがもらってあげるから」


下着を付けた後、私は女装用に持っていた服に着替えた。

鏡には男の頃の面影が完全に無くなった可愛らしい女の子しか映っていない。


「それにしてもそんなに小っちゃいのに、Fカップもあるんだね」


今の身長は男の頃よりも数㎝ほど低くなっているが、胸のせいで体重が数kgほど増えていた。


「私も大きい方だけど、あかりちゃんの方が大きいし」


「無駄に重いせいで肩が凝ってしかたないよ」


現在は武装も解除しているため、一般的な女の子と大差のない力しか出せない。

胸にやや重心が偏っているせいで慣れるまでは歩くのも大変なのだ。


「そういえばチャーランはどこに行ったの?」


何故か先ほどまで部屋にいたはずのチャーランがいない。


「あぁ、あいつならあそこにいるよ」


紫姉が指を指したところを見ると、チャーランがボロボロになった状態で床に倒れていた。


「あかり・・・たすけて」


「チャーラン!?何があったの?」


「分からない、突然後ろから何かに攻撃されたんだ」


「そしたら意識が朦朧として・・・」


「ひ!・・・」


チャーランは何かに怯えているようだ。


「あれは鬼だ・・・恐ろしい鬼だ!」


ぷるぷると震えるチャーランは紫姉の方を見て、異質な何かを感じた。


『喋ったらわかるよね・・・』


「ひぃぃ!!!!ごめんなさいもうしません!」


その日チャーランは恐怖で一睡も出来なかったようだ。


△△△


「ねぇチャーラン?」


「あかりどうしたんだい?」


私は少し気になったことをチャーランに聞くことにした。


「私がシメン星人と戦っているときに、紫姉が部屋に来なかった?」


外であれだけ大きな音がなれば、心配性の紫姉は真っ先に私の所に来るはずだ。


「一応来たけどその時は僕があかりの声を真似てごまかしたよ?」


するとチャーランは私とそっくりの声を発した。


「どうかな?僕のようにレンチ星人は他人の声を自在に出すことが出来るんだ」


「大昔に動物の声を真似て狩りをしていた時の名残が僕たちに残っているんだって」


「へぇ~結構便利ね」


「ちなみに紫姉になんて言って帰ってもらったの?」


「え?男が自室ですることなんて一つだろ?」


もしかしてあれじゃないよね?

恐る恐るチャーランに答えを聞いた。


「それじゃ分からないから具体的に教えてくれる?」


「えっと、オ〇・・・」


「ストップ!!!それ以上は言わないで」


通りでおかしいと思ったのである。

実は夕食の後に、紫姉が妙によそよそしい態度で接してきたのだ。


「あかりちゃん、さっきはごめんね」


「別にいいわよ、チャーランと仲直りしてくれたんだし」


「そっちじゃなくてその前の・・・」


「ん?」


「外は大変なことになっていたけど、あかりちゃんも男の子だもんね?そういうことするよね」


「あ!ちょっと」


紫姉は顔を真っ赤して、そのまま自分の部屋に戻ってしまった。

通りでよそよそしかったはずだ。

紫姉は私があれをしている最中だったと誤解しているらしい。


「うぅ、死にたい・・・」


「まぁまぁいいじゃないか、これも大人になるってことだよ」


「うるさい!!!」


私は腕だけを武装化し、チャーランを外に投げ飛ばした。

チャーランには勝手な行動をしないように、常に監視しておく必要があると心に決めたのである。

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