武装少女シュイラ~変身の影響でTSしたけどなんとか宇宙海賊から地球を守ります~

りくりく

第一章武装少女集結編

第1話 武装少女出撃します!

僕はこの容姿のせいで昔からよく女の子に間違えられてきた。

150cmという小さな体に、キメの細かい白い肌、童顔と女性らしい要素が3拍子揃っている。

さらに声変わりが起きなかったせいで、高校生になっても高い声のままだ。

僕の父と再婚した義母の連れ子だったゆかり姉さんには毎日のように着せ替え人形にされている。

今日はどうやらチャイナ服をご所望しょもうのようだ。


「かわいい!!!あかりちゃんはどんな服を着ても似合うね!」


「今日だけだよ?さすがにこの服は恥ずかしいって・・・」


僕が来ているチャイナ服は太ももの側面が大胆に空いていて、角度によっては中のパンツが見えそうになっている。

度重なる女装によって女装の抵抗はなくなっていても、肌面積の多い服はやっぱり恥ずかしいのだ。


「顔も声もかわいいし、背も小っちゃいし、おまけに名前も可愛い!」


「あかりちゃん本当は女の子なんじゃない?」


牛崎うしざきあかり、それが僕の名前だ。

苗字はともかく、名前については僕が生まれたときにあまりに可愛かったことから、女の子のような名前が付けられたらしい。

不服ではあるものの、小さい時に亡くなった実の母が付けてくれた名前ではあるので、今更変えるわけにもいかないのだ。


「もう!何回も言ってるけど僕は男の子だよ!?」


「またまた~、なんだったら一緒にお風呂に入って確かめさせてよ」


「遠慮します・・・」


小さい時ならまだしも大学生の紫姉さんと一緒にお風呂に入るのは、健全な男子高校生としてさすがに刺激が強すぎる。

紫姉さんはただでさえ美人で有名な人で、業界最大手の雑誌のモデルにスカウトされたこともあるのだから少しは自重してほしいものだ。


「そろそろお昼も近いし、食材の買い出しに行こっか?」


時計を見ると、いつの間にか針が12時前を刺していた。

今日は休日の日曜日で、紫姉さんと一緒に食材の買い出しに行く日だ。

毎日の家事は大変ではあるものの仕事で忙しい両親のために紫姉と僕の交代制で家事をしているのだから、こればかりは仕方がない。


「今日はあかりちゃんの手料理を楽しみにしてるね」


「男の手料理なんだし、そこまで期待されても・・・」


「そんなことないよ!あかりちゃんはその辺の女の子よりも家事が出来るんだから!」


紫姉さんの言う通り、ある程度は家事ができる自信はある。

それでも紫姉さんの料理には遠く及ばないのだ。

せいぜい人より少し料理が得意な男子高校生といったところだろう。

買い物に行く直前で、僕はすっかり忘れていた自分の格好のことを思い出した。


「あ!そうだ、服を着替えないと」


「別にそのままでもいいのに」


「いや、さすがにチャイナ服はダメでしょ」


「え~、それじゃこっちに着替えてきてよ」


そう言ってタンスから引っ張ってきた服を手渡してきた。

そして何の疑いも無いまま服を着終えると、明らかにフリルの多い女の子の服であることが判明した。

鏡にはゴスロリ風の衣装が写りこんでいる。

僕は紫姉さんのお願いで少しだけ髪を伸ばしているため、自分から見ても女の子にしか見えない。


「げ!紫姉さんこれ女の子の服じゃん!」


「ふふ、作戦成功ね」


「もう12時過ぎてるし、これ以上昼食の時間をずらしたくないでしょ?」


「まぁチャイナ服よりはマシか・・・」


僕は仕方なく女の子の格好で外に出ることにした。


「うわぁ、暑い」


「熱中症には気を付けないとね」


そう言って紫姉さんは日傘を手渡してきた。

快適な気温だった室内と違って、外は少し暑くなっている。

日差しも強く、あまり長い間外に居続けるのはよくないだろう。

まだ4月が始まってすぐなのに、今日は妙に気温が高い。

そして行きつけのスーパーで、昼食と夕食を含めた食材を買い足した。

今日はいつもより暑い日なので、メニューは涼しくなる食べ物にするつもりだ。

その後スーパーの帰りに自宅の近くにあるのゴミ捨て場で、シルクハットをかぶった茶色のぬいぐるみを見つける。

ぬいぐるみを拾って状態を確認してみると、ところどころ布がほつれているが、捨てるにはもったいないほど状態が良かった。


「そのぬいぐるみ誰のか知ってるの?」


「わかんない、けど捨てるにはもったいないと思って」


ゴミ袋に入っていないところを見ると、通行人が乱雑に捨てたぬいぐるみかもしれない。

それにぬいぐるみが捨てられている場所は僕たち専用のゴミ捨て場で、近隣の住人が捨てた可能性は低いのだ。

一応スマホで調べてみたが、ゴミ捨て場に捨てられた物を持ち帰っても盗難行為にはならないらしい。


「捨てられてるんだから、拾ってもいいよね」


「あかりちゃんはぬいぐるみ好きだもんね」


「別にいいでしょ?それにこのぬいぐるみは珍しいキャラクターかもしれないし」


実は僕は昔からぬいぐるみを集めるのが趣味になっている。

両親や紫姉さんから手当たり次第にぬいぐるみをもらっていたものだから、いつの間にかぬいぐるみが好きになっていたのだ。

今では自作のぬいぐるみを作ったりもしている。


家に帰ってすぐに料理を始めた。

今日は久しぶりに冷やし中華を作った。

リビングの机に料理を並べ、そのまま席に着く。


「わぁ今日は久しぶりに冷やし中華なんだね」


「今日は暑かったからね」


「「いただきます」」


「ん!おいしぃ~!やっぱりあかりちゃんのご飯は最高だよ!」


「まったく大げさだな・・・」


紫姉さんと一緒に昼食を食べ終えた後、さっそくさっき拾ったぬいぐるみを直すことにした。

裁縫箱を取り出し、慣れた手つきでほつれている部分を縫い直していく。

そして10分もしないうちに、ぬいぐるみを直すことが出来た。


「よし!我ながらいい出来だ」


出来栄えに感心していると、突然何処からか声が聞こえた。


「僕を直してくれてありがとう」


「誰!?」


部屋中を見渡すが、そこには誰もいない。


「こっち、こっち」


「ん?」


声の発生源はどうやらぬいぐるみからだった。

いつの間にか動き出していたぬいぐるみと目が合ってしまい、衝撃で固まっている。


「え!えぇぇぇぇ!!!!ぬいぐるみが動いた!?」


「やぁ初めましてだね、僕はチャーラン、レンチ星という星からやってきた君たちが言うところの宇宙人だよ」


宇宙人!?それにレンチ星ってどこの星!?

頭の中は疑問だらけでいっぱいになっている。


「君の名前を聞いてもいいかな」


「ぼ、僕はあかりだけど・・・」


「そうかあかりって言うんだね、よろしく」


「よろしく・・・」


するとチャーランは懐から、白と黒の宝石が埋め込まれたブローチを取り出した。


「それは?」


「これは変身するための装置、突然で悪いんだけどあかりにはこれを使って武装ぶそう少女しょうじょになってほしいんだ」


「はい?」


「それは肯定ととらえていいんだね」


「あ!違う、今のは言葉のあやで・・・」


チャーランと話していると、突然窓の外で爆発音のような大きな音が響いた。


「え?何が起きて・・・」


「ぐ!の奴らもうこの星に辿り付いたのか・・・!」


「あかり!急いでその変身装置を使って武装少女シュイラに変身するんだ!」


「シメンって何!?それにシュイラって・・・」


「詳しい話はあとでするよ、とにかく今は早く変身して!」


「このままじゃこの街が大変なことになる!」


「でもどうすれば・・・」


「掛け声はチェンジ・フィー!そのブローチを胸元に近づけて、その言葉を叫べば変身できるよ!」


チャーランに言われるがまま胸元にブローチを近づけ、変身の合言葉を叫んだ。


「わ、分かった、チェンジ・フィー!!!」


すると体から光があふれ、次々と武装が装着されていく。

武装は全身を覆うように装着され、白と黒が混合した装飾が施されている。

頭には大きな角の形状をしたサークレットが浮かんでいた。

さらに元の黒髪から白髪になっており、長い髪が三つ編みのおさげの状態で結ばれている。

そしてやけに胸が重い。


「何これ!?胸!?髪も伸びてるし、どうなってるの!?」


「それは仕方がないことさ、武装少女は女の子にしかなれないからね」


「私男の子なんだけど!?」


「あかりは特別さ、男でありながら生まれつき女の子の因子を持っているんだ」


「だからこそ武装少女になれた、その体は変身の副作用だと思っていいよ」


嫌な副作用である。

どうやら体だけじゃなく、口調も女の子のようになっているようだ。

だけど体の奥底から、力と勇気が湧いてくる。


「その状態なら、奴らを一掃できるだろう」


「さっそく外のシメン星人どもを、討伐してくれ」


「やるだけやってみるわ!」


自宅の窓から外を見ると、すでに大量のシメン星人が降りてきていた。

シメン星人は次々と建物を壊し始めており、周囲の住民は悲鳴を上げて逃げ回っている。

シメン星人は人間の倍ほどの身長で爬虫類のような皮膚に、トカゲのような顔、そして未知の物質で作られた鎧をまとっていた。

3mほどの大きさのシメン星人が多い中、中央には高層ビルの高さと遜色ないほど大きい怪物がいる。

見たところあれが今回の親玉なんだろう。

自宅の窓から飛び降りると、一切けがをすることなく地面に着地した。

どうやら足の丈夫さも向上しているらしい。

すると近くで女性が叫ぶ声が聞こえた。


「早く助けるわ!」


声のあった場所に着くと、高校生くらいの金髪の女性が目の前のシメン星人のせいで足がすくんで動けなくなっていた。


「そこの怪人!これでもくらいなさい!」


私はシメン星人の顔に目掛けて、飛び蹴りをした。

するとシメン星人は「キュイイ!!!」と叫び声を挙げて吹き飛び、住宅の外壁に激突する。

その後光の粒子となって消えてしまった。


「すごい力ね・・・今なら体育で無双できそう」


変身前の運動音痴で貧弱だった体と比べて、信じられないほど力がみなぎってくる。

変身後の能力に感心していると、助けた女性が話しかけてきた。


「あ、あの!助けてくれてありがとうございます!」


「お礼は良いから、早く逃げなさい!」


「は、はい!」


それから次々と近場のシメン星人を倒していき、大半を減らしたところでようやく親玉の元へとたどり着いた。

すでに自衛隊も現場に突入しており、数体のシメン星人を倒していた。

残ったシメン星人は自衛隊の人たちに任せるべきだろう。


「なんだ?貴様は?」


「あんたは喋れるのね」


「吾輩は宇宙海賊シメンの幹部、ブラワーシェメル将軍だ!」


「貴様のせいで吾輩が考案した作戦が台無しになった!」


「貴様にはその責任を果たしてもらうぞ!?」


「ふん!やれるものならやってみなさい!」


ブラワーシュメル将軍は、先ほど倒したシメン星人をそのまま大きくしたような体をしていて、頭に特徴的なトサカを持っている。

背中には大きな斧を背負っており、ひょいと片手で持ち上げたことから、かなりの力自慢であることが分かる。

ブラワーシェメル将軍は斧を構えると、私の名前を聞いてきた。


「ここまで吾輩の部下を倒した褒美に、名前だけでも聞いておいてやろう」


「私はあんたを倒すためにやってきた武装少女シュイラの一人、近接特化型のフィーよ!」


なぜだか自分の知らない情報がすらすらと出てくる。

これも変身の影響なのだろうか。


「武装少女だと?くそ!あの腹黒毛玉の手先か!どおりで厄介な相手だと思ったわい!」


「あら、チャーランのことを知っているのね」


「あいつには我々の計画をことごとく邪魔されてきたからな!」


「貴様には我々の長年の恨みを思い知ってもらうぞ!」


それから激しい攻防が始まった。

ブラワーシュメル将軍は自身の筋力を生かした破壊力のある攻撃を次々と繰り出している

だが明らかにフィーの方が優勢で、次々と斧による攻撃を避けていた。

そしてフィーは太ももに力を入れながら頭を前に突き出すと、そのまま突進した。

フィーの突進は恐ろしい勢いでブラワーシュメル将軍の腹に衝突する。

あまりの勢いに巨体であるはずのブラワーシュメル将軍の体が宙に浮かび上がり、そのままビルに激突するとお腹を押さえて地面に座り込んでしまった。


「バカな!あの小さな体にこれほどの力が備わっているとは・・・」


敵がひるんでいるうちに、私は自身に装着された武装にある信号を送った。

すると武装がはがれ、私の真横で次々とパーツが組みあがっていく。

すると大きな重火器が組みあがった。

重火器の名は、高出力プラズマ火砲アピス。通称アピス砲。

武装少女フィーの奥の手にして、一度使用すれば自身のエネルギーの大半を使い果たす諸刃の剣でもある。

そして私は銃の持ち手を握り、相手に向かって叫んだ。


「あんたには特別に私の必殺技をお見舞いしてやるわ!」


「アピス砲出力最大!、敵に向けて全エネルギーを放出!」


エネルギーが最大まで蓄えられたのを確認し、私は銃のトリガーを引いた。


「アピス・フルバースト!!!!」


その瞬間高出力の光線が銃身から解き放たれた。

放たれた熱戦は周囲の空気を歪ませながら、音速を超える速度でブラワーシュメル将軍のお腹に直撃する。


「バカな!!!!グワァァァァ!!!!」


その後断末魔と共にブラワーシュメル将軍は消滅してしまった。


「ふふん、ざっとこんなものね!」


私はその場を後にし、チャーランが待つ自宅にそのまま帰ることにした。

この日からシメン星人によって波乱万丈な日常になることを、私は知る由もない。

















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