第7話
「君、面白いね!」
何がそんなに面白かったのかはよく分からないけれど、楽しそうに笑う水野くんを見て、なんだかホッとした。
ちゃんと笑えるんだって。
いつも見せる爽やかスマイルも素敵ではあるけれど、私は今の水野くんの方が好きだなと思う。
「さっきはごめんね。仮面みたいって図星な事言われて、少しムカついちゃった。でも、その方が楽なんだよね。」
みんな、水野くんを外見でしか見ていない。
見た目だけで理想像を作り上げて、理想像じゃない事をすると急に批判する。
確かに、仮面を被ってると楽なのかもしれない。
でも、誰にも本当の素顔を見せずにずっと仮面を被り続けるのは自分自身を見失ってしまう。
それはなんだか寂しい。
「もっと素直なれたら良かったな。君みたいに。」
そう言って少し切なそうに笑う水野くんに、胸が苦しくなった。
成績優秀で、スポーツも万能。
爽やかスマイルで女の子にモテモテの彼は、いつも孤独な仮面を被っていたんだね。
「あの、もう一つ、して欲しい事があるんだけど良いですか?」
さっきまでして欲しい事なんて何も思いつかなかったけれど、今しか出来ないお願いをしてみる。
「肉まん、一緒に食べませんか?」
抱えていた袋から肉まんを取り出して、水野くんの目の前に差し出すと、少し驚いた顔をして肉まんを見つめている。
あ、ダメだったかな?なんて思っていると、吹き出すように水野くんは笑い出した。
「あはは!何それ!」
水野くんは、楽しそうに笑う。
もう仮面を被った水野くんはいないね。
だって、今の笑顔が一番素敵だと思うから。
仮面を被った君は、 【完】
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