第1話
「好きです!付き合ってください!!」
ある日の昼下がり。
突然耳に飛び込んできた声に、思わずお箸で挟んでいた卵焼きを落としそうになった。
無事に救出した卵焼きを頬張りながら、目の前の光景を眺める。
「ありがとう。すごく嬉しいよ。」
にっこりと爽やかに笑う彼に、女の子は頬を赤らめた。
ゴクリと卵焼きが胃袋に落ちる。
それと同時に、あの女の子も彼の爽やかスマイルに落ちたなと思う。
「でもね、今は彼女欲しいとか全然思ってなくて。だから、気持ちだけ貰っておくね。」
スラリとした背を少し屈ませながら、女の子の頭を優しく撫でると、彼は「ごめんね。」と小さく言葉を落として女の子の側から去っていく。
ズルズルとその場に座り込む女の子は、もう完全に彼の虜のよう。
「
「あ、ごめん。」
一緒に隣でお昼ご飯を食べていた
でも、教室でお昼ご飯を食べてて、突然廊下で告白なんか始まったら誰でも食い入るように見ちゃうよ。
「しかし、さすがこの学校一の爽やかイケメンだわ。」
菜央ちゃんは“うんうん”と頷きながら、爪楊枝に刺さったプチトマトを放り込む。
そんな菜央ちゃんを、私は驚くように見つめた。
「え、まさか優衣知らないの?さっきの人のこと。」
コクリと小さく頷くと、目をまん丸にして驚く菜央ちゃん。
そんな菜央ちゃんも可愛いなって、口に出しそうになったけれど、また怒られちゃうからグッと堪えた。
「信じられん!!水野くんだよ?あの、
必死に名前を伝えてくれたけれど、全く聞き覚えのない名前に首をかしげる。
「今、この学校で彼氏にしたい男、ナンバーワンだよ。スポーツ万能、成績は常に学年トップ!!そして何よりあの爽やかスマイル!!あんな笑顔見せられたら、女の子はみんなイチコロだよ!」
「そう、なんだ。」
反応の薄い私に、呆れたようにため息を落とすと、菜央ちゃんは渋々残りのお弁当を食べ始めた。
そんなに有名人だったんだ。
全然知らなかった。
もう高校生活も半年ほど経ったというのに。
スポーツも勉強も出来るなんて、そんな完璧な人って実際に存在するんだと、水野くんを眺めながら思う。
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