第2話

「ごめん!本当に、ごめん!!」



「まじで最低っ!!!これ全部持って、ここから出てって!!」



「うわっ、痛ぇっ!!あ、おい!美穂っ!!!」






煩いこの男と、ありったけの洋服や食器類を外に放り投げると、勢いよく玄関のドアを閉めて、鍵をかける。



あたしの名前を呼びながら、ドンドンとしつこくドアを叩く音がするけれど、無視して布団にうずくまった。




しばらくすると、ドアを叩く音がなくなって、静かな時間が流れる。


その瞬間、酷く乱れた心が少し落ち着いて、頭の中で何が起きたのか、冷静に考える。





確か、仕事が終わって、スマホを見ると、あの男からラインが来てて、“大事な話がある”と言われたんだ。



もしかしてついにプロポーズ?と思って急いで帰って来たら、浮気相手との間に子供ができてしまったと、土下座して言われて。





ああ、とんでもない事が起きた。






あたしはたった今、五年付き合った男と別れたんだ。




五年だよ?



あたし、もうすぐで三十歳になるのに。


どーすんのよ、これから。






ごめん!だなんて、聞きたくない。



欲しかった言葉は、そんなんじゃない。




五年間も、ずっと待っていたのに。




きっとあたしは、この人と結婚するんだってずっとずっと思って待っていたのに。





呆気なく終わった。



一瞬の出来事。





もう、本当に最悪。







気がつくとポロポロと目から涙が散っていた。



どんどん枕が濡れていくけれど、御構い無しにバカみたいに泣いた。



明日も仕事なのにな。




このままだと、明日目が腫れてしまう。




ダメだ、ダメだ。





あんな最低男の事で泣くなんて、時間が勿体無い。




ただでさえ、この五年を無駄にしたんだから。




さっさとあんな男のことなんて忘れよう。





そう思いながら、あたしは眠りについた。

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