第19話

私はバカみたいに神崎くんの事考えて寝れなかったっていうのに、当の本人は何事もなかったかのように過ごしてるし。


ほんと、むかつくよ。









「香織、またメロンパン食べてるんだね。」





隣で甘い匂いを漂わせながら、むしゃむしゃと顔よりも大きなメロンパンにかぶりつく香織。





「だからー、メロンパンは別腹だってー!」






やっぱり香織は何してても可愛いよね。



パクパクとメロンパンを美味しそうに食べる姿は、お花が周りにチラチラ見えてくるぐらい、ふわふわしてて可愛らしい。




私もこんな風に女の子らしかったら、何か違ってたのかなー。



そんなことを考えながら、私は色気のない黄色いみかんを手にして皮を剥いた。




皮を剥くと、みかんの爽やかな香りが広がる。






「愛菜は冬になると、いつもみかん食べてるよねー!」



「みかん好きだもん。」



「てか、みかんだけじゃなくて、柑橘系全般好きだよね!」





柑橘系と言われてハッする。




神崎くんを見ると、またこっちを見ていて目が合った。




何でこっち見てんのよ。





いや、私を見てるんじゃないのかも。





私の後ろにいる誰かを見てるんじゃ。






そう思って振り返ると、私の後ろには誰もいなくて。





また神崎くんを見ると、ふっと笑われた。



何よ。


ほんと、むかつくんだけど。







「そういえば愛菜、前に神崎くんの香水良い匂いだねって言ってたことあったね!」



「はっ?!」





また、香織は余計なことを・・・。



確かに、入学してすぐにそんなことを言ったかもしれないけれど、それ、今言わないでよー!!!







「柑橘系の物は何でも好きだもんねー!」







何も知らない香織はニコニコと楽しそうに言う。





神崎くんは唇の端を上げて、嘲笑うように私を見ている。




まさにこれは、金曜日に見た、あの悪魔みたいな笑顔。






も、もしかして、勘違いしてないよね?




私が好きなのは佐伯くん。



確かに神崎くんのシトラスの香りは好きだし、柑橘系の食べ物も大好きだけど。



神崎くんのことは好きじゃない。



むしろ嫌いだよ!!




あんなやつ。

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