第1話

幼い頃、ちょっとしたきっかけで人は離れていってしまうことに気付いた。




実際、本当の友達なんてものは存在しなくて、みんな上手に感情をコントロールして上辺だけで付き合っているだけ。





だったら誰とも口をきかずに、感情を表に出さないようにして過ごしていく方が、私は楽だ。





誰かと関わると、相手を傷付けてしまう。



自分が辛くなる。






だから私は人とは距離を置くようになった。






誰とも関わらず、1人で日々を過ごす。




誰よりも目立たず、なるべく地味に。







そんな私に近付いてくる人は誰もいない。






誰もこんな私に関わろうとはしない。






それでいい。







地味でいい。





地味子でいい。






地味子上等!!!!









そう、思っていたのに。






私は今日、自分とは真逆の人間、いやバカ犬と出会ってしまう。




私が今まで作り上げてきたものを、ボロボロに破壊しようとしてくるバカ犬は、まるで本当の犬の嗅覚並みに、私の感情を見抜いて私を困らせる厄介な男。







桜の花が舞う季節。


高校2年になった私は、同じクラスにあんなバカ犬がいることには、まだ気付いていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る