第24話 失踪
「ほんとに、どこいったんだよ……」
虚ろな目、目の下には黒々とした隈、乱れた髪。
ほとんど絶眠絶食状態の透華は虚空に放るように言い投げる。
──結衣が失踪した。
ストーカーが結衣に直接接触を図った日から二日間、結衣は一言も発することはなく、部屋に閉じこもってしまっていた。だから気づかなかったのだ。
(いや、言い訳だよな……。紅葉さんが不安定なのはわかってたんだから、ちゃんと見ておいてあげるべきだったんだ……)
一人になる時間も必要かと勝手に距離を置いたのが失敗だったのだ。そう反省してももう結衣はここにいない。
結衣の失踪に気づいてすぐに両親に相談したり学校を欠席して結衣の行きそうな場所を探し回ったが、未だに見つけられていないのだ。
結衣が家を出たと思われる日からはや三日目の早朝、朝日を浴びながら透華は茫然としていた。
テーブルの上にはメモ書き一枚。
そこには綺麗な手書きの字で綴られた結衣からのメッセージがあった。
『たくさん迷惑かけてすみませんでした。かたをつけてきます。ありがとうございました』
何度読んでも、つららが頭に落ちてきたかのような寒々しいほど短文のメッセージが透華の頭を揺する。
かたをつけるという表現、なくなっているかばん、がらんとした家の中、静まり返った部屋の中、早鐘を打つ心臓──。
ぽっかりと穴が開き空虚感を醸し出す家の空気感が、透華の背筋を撫ぜる。
万策尽きたか。そう思われた時だった。
結衣の居場所はスマホが──皮肉なものだがストーカーからのメールが──教えてくれた。
『場所は────。早く来ないと結衣を殺す。死に目に会いたければ精々頑張れ』
こちらも短文だが、結衣のメモ書きとは全く異なる異物感を醸し出していた。
軽薄さすら感じられる短い脅迫文。そんな文章でも、今の透華には一筋の光明が差したように感じられた。
書かれていた場所はここから六百キロ以上離れた場所で、ここに書かれている結衣の居場所が本当にかもわからない。しかし、行ってみるほかないだろう。
「……行くか」
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