第3話 白い十字架の詩


ひとが幼く生まれるのは

初めてこの世界に芽ばえたときを

思い出させないためか


誰かと約束ができるなんて

そんな優しさの糸はないこと

生きてみれば分かったはず


ただ

思い出してみれば

いちばん辛くて でも

いちばんいのちを感じられた

ときがあった


たぶん 初めだったはず


風すさぶ闇に立つ

わたしは白い十字架だった


そこには

何の呼びかけもなかったけど

わたしがわたしでいる

迷いは少しもなかった


わたしはたしかに

十字架でいられた


なにものにも

きづかれない

ふれられない


白い十字架

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る