第6話 ファッションセンス

学生たちが勉強から解放され、好きな子との距離を縮めようと奮闘する学校行事……それは……


林間学校である。


○○○


「そういや来週、林間学校ですね〜」


学食のからあげ定食をほおばりながら、伊代が言う。

最近はずっと、俺、うか、伊代という傍から見たら謎のメンツで昼食をとっている。


「そうか、もう林間学校か……」

「あら、圭、どうかしたの?そんな辛気臭い顔して」


顔をしかめた俺に、うかがすかさず追求。それに対して俺もすかさず反撃。


「……うか、忘れたのか」

「?」

「俺の私服が……激的にダサいことを……!」


その瞬間、うかはせき込んだ。

そして、端正な顔の上に、絶望をあらわにする。


「そうね。そうだったわ。林間学校は山歩きの時とか、活動時以外は私服。そして、圭の私服はちょっとアレ……なんだったわ」


そう。何を隠そうこの俺は、ファッションになど興味を持たない陰キャ。


私服が終わっている!


そのダサさを抑えるため、いつも、かわり映えしない白いTシャツにジーパンの格好だ。


普段なら俺のことを全肯定してくれるうかでさえ俺の私服のことはダサいと認識している。これはやばい。


「……そんなにやばいの?見たことないから分かんない」

「あ〜……圭はね、変な服着てる訳じゃないの。色とか柄とかの合わせ方がちょっと…ね。」


うかが、こないだ遊園地に行った時の俺の格好の説明をはじめる。


お気にの白Tとジーパンが汚れて、泣く泣く捨てたばかりで、昔着ていたその他の服(ダサい着こなししかできないため封印したやつ)しか動きやすくちょうどいい服が無かったのだ。


すなわち、俺の格好は……


「ええっとね…白黒の縞模様のトレーナーと、赤いパーカーとグレーのパンツ…あとバカでかいリュック……だったはずよ」


伊代はじっとりした目つきでうなずく。


「好きな人のそんな服装、見たくないですね」

「そこまで言うなよ!」


俺のツッコミなど気にもとめずに、伊代は言葉を続けた。


「わたしがコーディネートしよっか?」

「…………へ?」

「明日土曜日だし、一緒に服、買いに行こうよ」


唖然とする俺。


「何?わたし変なこと言った?」

「えっと…いや、そんなことしたら、うかが嫉妬するんじゃないか?」


うかがフフンと鼻を鳴らす。


「築美と圭がくっつくわけないって分かってるから、もう平気よ。わたし成長したの……それに」

「それに?」


「ファッションモデルにコーディネートしてもらえば、少しはマシになると思うわよ」

「うか様の言う通りです〜♡」


…………………………?


「ファッションモデル?」

「あれ、言ってなかったかしら、築美はモデルなのよ」

「言ってねえよ!!」


やばい、今日イチびっくりした。

伊代がファッションモデル???


脳みそがフリーズしている間に、話がずんずん進んでいく。


「よし、築美。あなたに託すわ。圭をどうにかして頂戴」

「仰せのままに♡」


おい、ちょっと待ってくれ。


俺と伊代が、2人きりで出かける……!?

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