【400PV感謝】あなたの萌えは非常識!?〜駄目、わたし以外を見るなんて〜
猫井はなマル
第1話 大和撫子の逆襲
人並みに友達が……おらず、人並みに運動が……できない、唯一の趣味がアニメ漫画ラノベの一般人である。
華やかな二次元の世界に、何度憧れたことか。
自分はどうしようもない存在だ、ということを自覚しているところは、褒めて欲しい。
周りの人に迷惑をかけないように心がけて生きてきたので、極端に嫌われることはないにしても、「あ、いたんだ」と現実で言われたことは何度もある。二次元の、「華やかでないあるある」はだいたい経験ずみだ。
登下校の涼しい風に、何度も何度も心が折れる。学校で、やべぇことが起きませんように...。
そんな俺にも、誇れる幼なじみがいる。
才色兼備、文武両道。立てば美少女座れば美少女、歩く姿はマジ美少女。
完璧人間、大和撫子、クラスの憧れの的である。
うかの存在だけが、輝いて見える。あまりにもアニメ的設定だろう。美少女の幼なじみなど。
ただ、世界はそこまで完璧ではない。二次元ではないのだから。
高校生になってから、俺はうかとあまり話していない。疎遠になった。
小中高と、同じ学校に通うなんて運命では?と馬鹿なことを考えていたこともあるが、冷静に考えてみてほしい。
俺、モブ。うか、美少女。
……もう何も言わなくともわかるであろう。
誇れる幼なじみ、といっても凄いのはうかで、俺が誇れるところなどないのだが...。
大切な幼なじみが友達に囲まれて幸せそうにしているのを見ると、嬉しい。
たとえそこに俺がいなくともな!!
────そのはずなのだが。
このところ、うかがやたら俺に話しかけてくる。
「あ、圭。おはよう」
「うか。お、おはよう」
この美少女だ。津森うか。
あまり関わりがなかったと先程述べたが、少し訂正だ。最近、やたらくっついてくる。
俺の登下校に、張りついている。
まるで、後をつけているかのように……
「圭、どうしたの」
「いや、なんか最近になってまた関わるようになったけど────」
「なにか問題あるの?」
うかの目が鋭くなる。
「えぇーと、俺なんかと関わったらうかに変な噂がたつんじゃないかなーって...。」
これは、言おう言おうと思いつつほったらかしになっていた、考えだ。
カースト最上位のうかがいるのかどうかすらわからん俺と一緒にいると、奇異な視線を浴びるかもしれない。
もはや人生でするべきことがない(オタ活をのぞく)俺が、エンジョイ勢のうかを傷つけるきっかけになってはいけない。
そう思って言ったのだが...。
うかは黙りこんでいる。そのまま動かない。目が黒い。──なんか怖い。
「なんてこと言うの!!」
急に耳に入り込んできた絶叫に、体が震えた。
「圭と関わるのが一番好きなの!!この頃ようやく昔みたいに話せるようになったのに、なんてこと!!」
止まらない。
「もう二度と言わないで」
「あ、ハイ」
うかに圧倒されて、俺は学校につくまで言葉を発せなかった。
よく考えたら、疎遠になっていたとはいえ幼なじみである俺があんなこと言ったらダメだよなぁ。不必要に傷つける結果になってしまった。ちゃんと謝らなければ。
にしても、今日のうか───まじで圧があった。
うかがあんなに濃い自我を出したこと、今まであったか?なかったよな。
俺がコミュ障すぎて、普通の人なら気づけるような「うかの自己主張」に気づけていないだけかもしれないけど、とにもかくにもすごかった。
(あ〜、でも、うか可愛かったなぁー)
まぁ、俺はただの友達だし、うかが素敵な彼氏(彼女?)ができるのを眺めることしかできない。
それでもいい。うかに幸せになってほしい。
昔の映像がコマ送りに流れる。
「圭!!」
「圭おそーい」
「あっち行こ、圭」
(────好きだったんだけどな────)
ま、もう昔のことだ。
「圭、かーえろ」
「う、うん」
気がついたら後ろにうかがいた。
周りのイケメン達が俺を見る。やめてくれ、その視線は効く。
「ねえ、圭、聞きたいことがあるの」
「ん、何?」
「どんな女の子が好き?」
うかの言葉に、思わず咳き込んだ。
「好みのタイプ!?」
「そう。教えてよ。教えなさい。」
やはり今日のうかは圧が強い。
待てよ…好み?俺の?……俺の初恋は、うか。そしてそれ以来、誰にも────。
そうだ、推しキャラについて語ればいいのでは?
俺の愛するハーレムラブコメ。
主人公を好きになる、オタクに優しいギャルのヒロイン、我が推しキャラを!!
「金髪ギャル、とか?」
長い長い空白が時を埋めた。
俺、なにか問題があることを言っただろうか。
「許せない」
「え?」
「そんな淫らな!!非常識よ!!やっぱり大和撫子が一番よね!?」
……うか!?
「圭なんか死んじゃえ!!」
意味不明な罵倒に、俺はかたまってしまった。
「いや───そうじゃないの。わたしが言いたいのは……」
うかが、ゆっくり顔をあげる。
「愛してる♡」
目の中にハート、という表現。あれを考えた人は天才だ。
今までに見たことがない恍惚とした笑顔で俺を見上げるうか。
理解できない状況に、とりあえず瞬きした。
里倉圭。男子高校生。
俺は、とんでもないものを目覚めさせてしまったかもしれない。
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