"応援してくれる人がいる"
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『はい、もしもし』
『もしもし、ハルちゃん。元気やった?』
『はい。ナギくんは……やっぱり忙しそうですよね』
『そやなー。
最近は、配信もできてへんしなぁ。
まあ……大詰めやからさ』
『いよいよ……来週末、ですね。世界大会』
『ほんま、いよいよやな。
週明け早々に向こう行くねん』
『え……えーーー!!びっくり。
うわぁ……早いなぁ……。
あ、パスポート忘れちゃダメですよ』
『はは。大丈夫やで。2回目やし。
でも……慣れへん土地で、また2週間も過ごさなあかんのはツラいわぁ』
『え、長。
……そっか。大会日程自体、1週間ありますもんね』
『そうそう。
まぁでも、トーナメントやから……
もし途中で敗退したら、その分帰国も早くなるけどな』
『それはナイ。絶対いけるもん。
絶対絶対、フル日程での滞在になります!!』
『うん、ありがと。
大丈夫。俺らみんな、そのつもりで準備してるよ』
『そうですよね……良かった。
うわー……もう来週なんだ……。
なんか……勿論、楽しみなんですけど……ソワソワしちゃう』
『え、ハルちゃんも緊張してくれてるん』
『はい。いつも試合前、勝手に手が震えるんですよ。
自分が出るわけじゃないのに』
『ははは。そうやったんや。
いやー……ここまで長かったような、短かったような……』
『そうですね……濃い1年でしたね』
『うん。大変やけど、やっぱ楽しいわ』
『ほんとですか……!
推しの"楽しい"が、一番嬉しい。ご馳走さまです』
『……そーゆーもん?
思えばさぁ……3年前に配信始めた時は、こんな未来があるなんて思わんかったなぁ』
『私は、初配信の日から確信してましたけどね。
"ナギくんは絶対、プロになる"って』
『……言うてたね』
『なんで、あの日のアーカイブだけ非公開にしてるんですか?
久しぶりに見たいです。懐かしさを浴びたい』
『無理無理。恥ずかしすぎるもん。
初心者感丸出しやし……弱気なこと言ってたし』
『え。そうなんですか?
多分、聞けてない部分だな……』
『うん。冗談抜きでさぁ……
ハルちゃんおらんかったら、今頃俺は何しとったんやろ』
『ええ?』
『あの初配信の日……勢いで始めたものの、
"俺の配信なんて、誰も求めんよなぁ"って……弱気になってもてさ。
ほんまは、最初の1ゲームだけプレーしたらヤメるつもりやってん』
『え』
『そんな中、ハルちゃんが観に来てくれて。
その上……コメントで褒めてくれて。
めっちゃくちゃ嬉しかったなぁ……。
それで俺、続けようって思ってんで』
『ええ……。もしそれが本当なら……
私の人生の中で唯一、誇れるエピソードになりますよ』
『……いや、もっといっぱいあるやろ。
けど、ほんまやで。ハルちゃんは俺の恩人なんよ』
『きょ、恐縮すぎる……』
『……ありがとう。俺の人生に夢をくれて』
『うっ…………泣ける…………生きててよかった』
『さぁ。いよいよ、恩返しの時や。頑張ってくるな』
『…………はい。
これまで辛いことも、苦しいことも、沢山あったと思いますが…………。
絶対絶対、最後に笑ってきてください……!』
『うん。観てて。
ハルちゃんの夢……俺が叶えるから。
練習……それから世界、行ってくる!』
『うぅっ…………いってらっしゃい……!』
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