「『会いたかった』って言ってよ」



・・-・- ・--・ -・-- -・ 



「モモちゃん」



「…………」



「なぁ、モモちゃんやろ?」



「………………」



「ファンミ、楽しかった?」



「…………………………」



「待ってよー。なんでずっと無視するん。

駅、そっちちゃうってば」



「………………人違いです」



「あ、やっぱり。声がモモちゃんやん。

一応"はじめまして"、やね」



「だ……誰でしょうか。怖いです。ストーカーやめてください。隣を歩かないで。離れてください」




「————真夏やのに、随分と"分厚いカーディガン"着てたよなぁ」




「……………………………………」



「ね。モモちゃん?」



「………………嵌めましたね?」



「ハマっちゃいましたね〜」



「…………おかしいと思ったんですよ。

確かに冷房効いてヒンヤリしてたけど、

そこまでじゃないなって。

出演者も含めて、誰一人厚着してなかったし」



「素直に着てくれてんの見つけた時、嬉しかったなぁ」



「……どこまでも卑怯が過ぎる」



「そんなことよりモモちゃん、想像通りめっちゃ可愛いわぁ。

ちぃちゃくて、肌白くて、黒髪ロング。解釈一致。

ジト目でもくりくりで、猫みたい」



「通報出来そう」



「ヒドない?感動の初対面やのに」



「そうですね。感動しました。

それでは失礼します」



「ちょ。なんで逃げようとするん。約束と違うやん」



「……約束とは」



「"俺がモモちゃんのこと見つけられたら"ってやつ」



「だって、こんなのズルじゃないですか。無効ですよ」



「いやいや。

カーディガンなくてもわかってたって」



「嘘つき」



「嘘やないよ。

とゆか、俺のことナメすぎやで。モモちゃん」



「はい?」



「あの応援ボードさぁ……

俺のイメージカラーやから、背景赤色にしてくれたんやろ?」



「………………」



「ほんで、そこに黒字でデカデカと……

[世界を獲れ]なんて激アツワード書くの、モモちゃんしかおらんやん」



「ぐっ………………」



「さ。もう十分わかったやろ。何食べたい?」



「[推しから逃げる 方法][検索]…………」



「はい、逃しません。

特に希望ないなら、俺の好きな店にしとくでー」



「う……うう…………」



「おし、席取れた。苦しんでないで、早よ行こ。

あ、手ぇつないでく?」



「普通に歩けます!!」



「ごはん食べた後、ゲーセンいこな」



「うう……過剰ファンサで死んじゃうよぅ……」



「ファンサやないんやけどなぁ」



・-・-- ・・ ・--・- ・・-・・ 

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