「『嬉しい』って言ってよ」



・-・-- ・・ ・-・-・ -・- 



『………………もしもし』



『おー。2週間ぶり、モモちゃん。

今、家着いたわぁ』



『………………お帰りなさい。

今日の決勝戦………………』



『う、うん』



『…………お疲れさまでした』



『っえ。あぁ……うん……。

観てくれて、ありがとう』



『いえ………………当たり前ですよ、それは』



『……………………』



『……………………』



『え……えーと。こんな遅い時間に、ごめんなぁ』



『………………いえ』



『…………モモちゃん?

あの……思ってた反応と、全くちゃうんやけど』



『だって……だって………………』



『……うん』



『お………………』



『………………"お"?』



『お………………おお…………

………………"おめでとう"しか出てこないぃ』 



『うん。それを一番に言うてよ』



『だめです……これじゃ足りないんですよ……。

この優勝は、みんなの努力の結晶なのに……!!

それに見合う祝言が、どうしても……思いつかなくてっ……』



『あぁ、相変わらずアツくて安心したわ』



『ほんっっっっと、激戦でしたね。

ずっとシーソーゲームで、ハラハラして……

どっちが勝ってもおかしくなかった』



『そやね』



『そんな中……勝ちを決め切ったのが……

最推しのっ……ナギくんのプレーだなんて……うぅっ…………

こんなにっ……こんなに幸せなことがありますか!????』



『えぇ……泣くんかキレるんか、どっちかにしてよ。

……いや、よう考えたらどっちもイヤやな。

素直に喜んでよ』



『嬉しいです。最高です。幸せをありがとう』



『はは。それが聞きたかってん。応援ありがと。

俺は……なんかもう、"嬉しい"より"安心"のが勝ってる気がする』



『……そっか。

それだけプレッシャーがあったってことですね……』



『まあ、チームのこともファンのみんなのことも背負ってるしなぁ。

自分のプレーの一つ一つに懸かってるって思うと……ちょっと怖くなる時、あるよ。

それに俺ら、前回の国内大会も優勝してるしな』



『そうですね……。

ただでさえ人気のあるチームなのに……連覇への期待もかかってるとなると、相当な重圧でしたよね……』



『そやなー。

あと、単に勝つだけではダメな時もあってさ。

なんでか勝ち方に文句つけられたりするから……。

んー、プロってムズいわぁ』



『……すごいです、みなさん。

本当にお疲れさまです』



『あー……ほんま良かった。

これで今回も出れるんやな……世界大会。

前回ベスト4手前で終わってもたからなぁ』



『はい。リベンジ、ですね……。

みんななら絶対、獲れます。心から楽しみです。

でもまずは、ゆっくり休んでほしいです』



『てかモモちゃん。今どこにおんの?

いつもと音の響き方、ちゃうんやけど』



『え……コワ……。ホテルですよ』



『え、なんで?どこの????』



『いや、場所は言いませんけど。今日の会場近くです。

正常な足取りで家に帰れる気がしなかったから』



『あ、やっぱり席取れてたんや。

どうやった?初のオフライン』



『それはもう……上手く言葉にできないですけど……。

みんなから伝わる緊張感と、会場の熱気で……常に胸一杯でした』



『そらよかった。

残念ながら、観客席見渡す余裕はなかったわぁ』



『当たり前です。

決勝で余所見ばっかしてたら大炎上ですよ』



『…………あ』 



『?』



『やっと出た。

モモちゃん、最新のお知らせ見てみて』



『え、はい……………………えっ』



『見れた?』



『え、え、え……まっ……な…………なにこれ……。

"優勝記念ファンミーティング"……!?』



『そー。俺らでこーゆーイベントやるの、初めてやん?

楽しみやわー』



『……いつ!?ら、来週末!!??

スグじゃないですか!

チケット……抽選!申し込み……っ!

あ、応援ボード新調!!』



『ドタバタやん』



『ちょ!忙しいので切ります!!!!』



『う、うん…………。

……テンション上がってくれるんは嬉しーけど。

なんか複雑やわぁ……』



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