お隣の美人四姉妹は多分帰還勇者の娘

3pu (旧名 睡眠が足りない人)

プロローグ クラスメイトはバニーガール



『一夫多妻制が制定されてから十五年。児童手当てや高校までの無償化も相まって、年々日本の人口は増加していますね』

『はい、この調子なら近い将来働き手不足はどうにかなるかもしれませんね』

『そうなるといいですね。左藤総理が異世界から帰還してから、様々な事業が急速に発展しておりまだまだどこも人手が足りてないですから──』


「一夫多妻制ね。俺には全く縁のない話だな」


 目覚めて早々、独り身には辛いニュースを見せられ、何とも言えないな気持ちになった俺は溜息と共にテレビの電源を切った。

 代わりに、昨日途中で見るのを止めた動画をスマホで再生する。

 最近練習している格闘ゲームのコンボを見ながら、朝食の食パンを胃に流し終えたところで俺は椅子を立った。

 今日は高校の入学式だから流石に遅刻するわけにはいかない。

 自室に戻って、真新しい制服に手を掛けた。


「動きづれぇな」


 寝巻きから制服に着替えた自分に違和感を覚えながら、スマホで電車の時間を調べる。

 すると、発射時刻が後わずかまで迫っていた。


「やっべ!」


 これを逃すとギリギリの到着になってしまう。

 まだ、自分のクラスが何組か、教室が何処にあるか分からない状態で流石にこれは不味い。

 俺は空っぽの通学鞄に筆記用具とスマホを放り投げる。

 それでもやけに軽い鞄に違和感を覚えていると、電車の定期を忘れていることを思い出す。

 駆け足で、リビングのダイニングテーブルにど真ん中に置かれている定期を回収。


「いってきます」


 いつも履いているスニーカーと間違えないよう、慎重に見慣れぬローファー履いてから家を出た。

 今までとは勝手の違うローファーに悪戦苦闘しながら歩くことしばらく。

 ようやく最寄りの駅に辿り着いた。


「えっ〜と、えっ〜と、たしかこの辺だったはずなんだけど〜」


 改札を潜ろうとしたところで、たまに見るお嬢様中学校の制服を身に包んだ金髪の女の子が目に入った。

 何故その子が目に入ったのかといえば、慌てた様子で何かを必死に探していたから。

 決して、その子がテレビに出ているアイドルや女優と同じくらい可愛かったからではない。断じて。

 とりあえず、俺も彼女に倣って下を向いてみると、緑色の定期入れが落ちていた。

 これが彼女のものかは分からない。

 だが、周りにこれ以外の物が落ちていないため、多分この定期があの子が探しているものだろう。

 きっと。

 おそらく。

 メイビー。

 不審者だと間違われないよう心の中で祈りながら、俺は拾った定期を持って少女に近づいた。

 

「あのさ、探してるのってこれか?」

「えっ?」


 声を掛けると、彼女の顔がこちらに向き、パァッと輝かせた。


「あっ!それです!良かったぁ〜。今日財布をお姉ちゃんに貸していて、これが無いと学校に行けなかったので本当に助かりました。ありがとうございます!」

「そうか。なら、良かった」


 どうやら俺の予想は間違っていなかったらしい。

 内心で胸を撫で下ろしながら、俺は少女に定期を手渡した。

 しかし、高校生と中学生だから周りから変に思われることはないだろうが、万が一という場合がある。

 そして、目の前にいる彼女の容姿から考えるに、その辺の男に言い寄られていて面倒な目に遭っている可能性もあるかもしれん。

 彼女に不快な想いをさせる前に離れるのがキチだろう。

 

「じゃあ、俺も学校行かないとだから。じゃあな」

「あっ、あの、ありがとうございました」

「おう。次から落とさないよう気を付けろよ」


 俺はぺこりと律儀に頭を下げる少女に見送られながら、改札を潜った。

 

 それから十五分後。

 高校の最寄駅に到着した。

 改札を抜け、自分と似た制服を身に纏う生徒達の後を追うこと数分。

 俺は無事に本日から通うことになる双世そうせい高校に到着した。

 案内の先生の声に従い、クラス表が張り出されている場所へ向かい自分の名前を探す。

 すると、三組までいったところで、三十番のところに三重田 真那斗という自分の名前があるのを発見した。

 今日から一年間俺は一年三組で生活するらしい。

 どんな奴らがいるのだろうとざっと名前を見てみるが、知り合いの名前はなかった。

 中学校に上がった時は何だかんだ知り合いがいたからやってこれたが、誰も知り合いがいないというのは初めてで不安でたまらない。

 クラスに上手く馴染めるだろうか?

 変なやつに絡まれないだろうか?

 そんな不安を胸に俺が教室のドアを開けると、そこには──


「おっ、ようやく人が来た。やっほー、これからよろしくね、クラスメイト一号君」


 ──純白のバニーガールが教壇に座っていた。

 

「おっふ」


 俺の高校生活始まって間もないがもう駄目かもしれない。

 ぷりぷりと揺れる白い尻尾を見ながら俺はそんなことを思った。



 あとがき

 今から書けばカクヨムコン間に合うやろシリーズ第二弾。

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