第2話竜王と女神

 わたくしは、女神オムニ。


 我は、竜王インペラトルだ。


 我々は、世界の守護者として、天界からあらゆる種族を見守っていたり、100年に一回のペースで、12歳以下の者に力を与えたりしている。


 


 「うむ…… 最近の魔族の行動は行き過ぎたものが多いと思わないか、オムニ」


 「そうですね、最近魔王が代替わりして、あまり統率が取れていないから仕方ないですねぇ」


 「そうは言っても、他種族に被害が出すぎておる。このままじゃ世界がめちゃくちゃになるぞ。


 だから、あれをやるぞ……」


 「力の継承ですね。ちょうど百年たっているので都合がいいですね」


 そう言うと二人は、準備を初めた。


 


 「さぁて、今回はどんなやつが出てくるんだ? 竜騎士に憧れているやつか? それとも心が強いやつか?」


 「正直私は、心が強ければ誰でもいいですね。どうせ皆、勇者になるでしょうから」


 「なんだぁ? 竜騎士が不人気とでも言っているのか? 誇り高き竜騎士に喧嘩売ってんのかぁ?」


 「いえ、私は相対的な人気のことを言っているのです。今までにここに訪れた人の内、何人が勇者を選んだか覚えていますか?」


 「くっ……」


 


 今までに二人が力を与えた人間は、10人だったが、そのうち2人しか竜騎士にしかならなかったのだ。


 その事実を思い出し、インペラトルは顔をしかめる。


 


 「ふん、まあいい、今回力を与えたやつが竜騎士になったら、今のトレンドは竜騎士ってことでいいか?」


 「いやそれは譲れませんよ。勇者伝説は世界各地にあるんですよ。それほどまでに勇者というものは有名なので今回も、勇者を選ぶでしょう。


 さぁ、そろそろ来るので構えておきましょう」




 「竜騎士になるのだ」


 「勇者になるのです」


 


 今回はこの少年がどちらの職業になるのか今か今かと楽しみにしていたのだが。


 


 「僕、郵便屋になるね」


 


 待て待て、想定外すぎるだろ。


 皆に問う。最上位職業の勇者と竜騎士か低位職業の郵便屋、どっちになりたい?


 普通、勇者か竜騎士だろう。


 なのに郵便屋を選ぶなんて、ド変人か、縛りプレイ大好き人間しかいないだろう。


 


 ――おい、やばいぞこれ…… も、もし万が一郵便屋になったら、まじで洒落にならんことになるぞ。


 ――ここは、一時休戦して彼をなんとかして、郵便屋になるという道を諦めさせましょう


 


 2人は協力してなんとかして、少年を竜騎士か勇者にしようと奮闘した。


 だって、我々は、百年に一度しか力を与えないのに、その持ち主が郵便屋にでもなったら宝の持ち腐れなんてものではない。


 下手しなくとも、人類終わるぞ。


 


 その結果、健闘むなしく、少年は郵便屋になることになった。


 だが、幸いにも世界を平和にするという約束は結べた。


 そして、少年は自分の夢を語り始めた。


 


 ――おい……オムニ……こいつ……


 ――はい……


 


 「お前おもしれーじゃねーか! きめた! おれはついていくぜ!」


 「私も同感です。あなたの行く末、見届けましょう」




 ――なぁオムニ、こいつ我らと友達になりたいだとよ。すげぇぜ、こいつもしかしたら、マジでやるかもしんねぇぞ!


 ――えぇ、私達も見ても対等に扱うなんて、今までいませんでしたからね。この少年、本当に世界を繋ぐ架け橋になるかもしれませんね。




 2人は少し広角を上げた後、少年の後を追うように地上に降りていった。

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世界最強!無敵!の郵便屋、配達途中に世界を救う つなまぐろ @tunanoisiwouktgisimono

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