天使の休日
緋色ザキ
第1話 幼い頃の夢
幼い頃の夢は、見たものに由来することが多い。
スポーツ選手だったり、アニメのヒーローだったり、おとぎ話に出てくるお姫様だったり。
そして、なにを隠そう私もその一人だ。私の幼稚園の頃の夢は羽を生やすことだった。いまの私には、その当時なんでそんなことを考えていたのか、一切合切覚えていない。
母曰く、小さい頃は鳥が本当に好きで、よく動物園などに行っては、鳥をじーっと長時間眺め、羽が欲しいと言っていたそうだ。
そんな子どもの戯れ言に対し、リアリストな母は羽なんて生えるわけがないと一刀両断した。そのときのことだけは、なぜかよく覚えている。
私は大泣きした。そんなわけない。絶対いつか、羽は生える。そう叫びながら地面を涙でぬらした。母はそんな私を見て、あきれ果てたという。
そんな母に対し、諦めという言葉を辞書に搭載していなかった当時の私は、天使の登場するアニメを見て、今度は天使になりたいとのたまった。母はそんな無垢な私に対し、
「天使なら私の子どもじゃないね。家から出て行ってもらうよ」
と、これまた冷たくあしらったそうだ。鬼のような人である。
さて、そんなこんなで幼い頃に非常に大きな挫折を味わった私であるが、つい先日、奇しくもその夢が叶うこととなった。期せずして、叶うことになってしまったのである。むしろ、強引に叶えさせられたといっても過言ではない。
そう、私は羽を生やされてしまったのだ。天使を名乗る、羽の生えた少女によって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます