土蔵破りの爆弾魔
星咲 紗和(ほしざき さわ)
プロローグ
冬の夜空は曇天に閉ざされ、街外れの田園風景に冷たい風が吹き荒れていた。その中に、ひと際目立つ古びた土蔵が立っている。黒く頑丈な木製の扉が閉じられ、そこに歴史の重みが漂っていた。
時計の針が深夜を指した瞬間、静寂を切り裂く轟音が響いた。白い雪を赤い炎が染め上げ、周囲の闇を一瞬で焼き払う。数秒後には、土蔵は瓦礫と化し、炎の中から黒煙が立ち上る。
その現場に残されたものは一つだけ――女人を模った金属製の置き物。雪と灰にまみれながらも、その不気味な輝きは炎の残り香とともに静かに佇んでいた。
事件の第一報はすぐに警察へ届けられた。連続して発生している「土蔵破りの爆弾魔」事件。文化財を狙った大胆な犯行と、美術品を奪い去る精巧な計画。だが、刑事の村岡直樹が直感するのは、それ以上の何かだった。犯人の目的は単なる窃盗ではない――その裏には、未だ明かされていない深い謎が隠されている。
女人の置き物は、犯人が残す唯一の手がかり。しかし、それが意味するものは何なのか、誰にもわからない。ただ一つ確かなのは、事件はまだ序章に過ぎないということだった。
村岡は置き物を見つめながら、固く拳を握りしめた。
「土蔵破りの爆弾魔」――その名の通り大胆不敵な犯人に、挑む戦いがいま始まろうとしていた。
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