対霧独立防衛空戦隊 ARMA ~宇宙とかくソラの舞~
たこ爺
プロローグ オルート01
土、日、水 00:11 定期更新予定です。
本日より新作投稿!
このあとも4話連投いたしますのでぜひご拝読ください。
よろしくお願いします。
深い、深い闇。用さえ足せそうにない狭い空間内に、目を閉じたときに等しい闇が広がっている。
紅一点、ベテルギウスかのような赤い光点が点滅している。
光に向かって手を伸ばし、星とは相反した冷たい突起に触れる。
カチッっという音とモーター音が響き始め共に新緑色の世界が広がる。
HUDも表示され始めたそこが私の古巣……愛機のコックピットである。
様々な計器、スイッチがある程度見えるようになり順を追ってこの機体を支えるシステムたちを起動していく。
『シルヴァHQより、オルート01へ』
「オルート01、シルヴァなにか?」
『現在確認されている敵戦力航空戦力は最低飛行団規模、後方には敵艦隊が聯合艦隊と砲雷撃戦を展開しています。かつてない規模です』
航空管制官であるシルヴァの声を聴きつつ、手は素早く動かしていく。
「案外少ないな。我々を舐められては困る……私の獲物が少なくなるからな」
『はあ、相変わらず豪胆ですね。必ず……皆で帰ってきてください』
……全く、相変わらずこういうときだけは心配性な方だ。
『こちらオルート02、心配いらねぇ。こいつは今日を楽しみにしてたんだ。最高の舞を披露できるってな。だから、心配いらない』
「……了解」
シルヴァの通信終了を確認し、愛機の最終チェックに入る。
まったく、相変わらず余計なことを言うやつだ。
「オルート01、両エンジンともに異常なし、各所スラスター、制御システム、オールグリーン。発艦準備完了」
『オルート02、同じくオールグリーン発艦準備完了した!』
「オルートよりシルヴァ。発艦許可求む」
『了解……オルート隊、
「カタパルトハッチ開放、オルート01,2 cleard for take off」
前方を塞いでいた巨大なハッチが弾くように開かれ、それが連続的に奥の滑走路でも起こったことが視認できた直後。景色が流れる。
慣性制御が一瞬機能不全になるほどの強烈な加速と共にソラへと打ち出される。
『隊長!遅いですよ』
飛び出した先にいるのは、私の僚機たち。発艦直後の不安定な状態にもかかわらずピタリと編隊を組み、離れない。
私の相棒も離艦数秒後には横にいた。
私の部下たちには、ひとりひとり個性がある。軍隊だというのに機体にも大きな個人差があるほどには。
酒飲みもいれば爺もいるしガキもいる。漢もいれば、姉御と慕われるものもいる。少し振り返った母艦には黒猫だって待ち構えてる。
普通人事で多少配慮されそうなくらいにはまともな人間の方が少ない。というか多分いない。
でも、皆等しく戦友だ。
全く頼りになりすぎる。まあ……それがありがたいのだがね。
視界を前に向ければ大型の巡洋艦高雄が先行しており、両脇を固めるように航行する駆逐艦秋月、雪風。
航行灯がその巨大さと、己の小ささを告げている。
しかし、問題はない。我々は、彼らをも凌ぐ艦隊の要なのだから。
3艦の横をすり抜けたその先を見ると、闇空のなかで、閃光が一つ、また一つと煌めいている。
閃光の正体は発砲炎、着弾炎、誘爆炎……すくなくともいいものではない。
大規模な砲撃戦、かつてない決戦が、今眼で繰り広げられている。
「オルート01よりオルート隊全機へ。我々は、アステロイドを超え、ついにここまでやってきた。機体、武装ともに最高の状態に仕上げたとは女王の御言葉だ。心配はいらない」
脳裏にスパナを持った旧友と虚空をタイプする少女の姿が浮かぶ。
「諸君!今宵は眼前に最高の
喜びか、機体が震える。いや、震えているのは私か。
「敵を搦めとり、その舞をもって美しく長年の仇、
「全機、
『『『了解!』』』
そうして彼らは、眼前に濃霧が立ち込める
……かつて、彼らは地球最後の防衛線を任された精鋭であり、後方戦力であった。
海軍の言う
しかし今、数々の星を超え太陽系は
これは、ソラをこよなく愛した漢と、ともに飛んだ鳥たちの話。
霧を払う為に宇宙を舞った狂信者の話………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます