45.世界全体の魔力バランス調整
空と大地に回復の兆しが見え、セイルはさらなる進展を目指して世界への影響に気を付けながら魔力を注ぎ込んでいた。しかし、ある日ふと気づいた。空の澄み具合や草木の成長が特定の地域では著しい一方、別の地域では停滞していたのだ。
「どうしてだ?均等に魔力を送ってるはずなのに、偏りが出ている…?」
セイルは大地に手を伸ばして、魔力の流れを感じ取ろうとした。しかし、大地の奥深くから伝わってくるのは不規則で乱れた脈動だった。何かがおかしい。それは表面ではなく、この世界そのものに根付いた問題のように感じられた。
「リーネ、ちょっと来てくれ!」
セイルの呼びかけに応じて現れたリーネも、魔力の流れを感じ取りながら眉をひそめた。
「なるほど、これは…魔力の循環そのものが崩れているわね。この世界全体の魔力バランスが取れてないみたい。」
「魔力バランス?」
リーネは世界の空を見上げながら、穏やかだが深刻な口調で続けた。
「この世界は、かつてエネルギーの暴走によって滅びた。その時に世界の核まで傷つけてしまった可能性が高いわ。恐らくその影響でこの世界自体が魔力を制御できなくなっているのよ。本来なら、偏った魔力は自然界が少しずつその偏りを修正していくものなのだけどね。」
セイルは拳を握り締めた。
「今は自然と言えるようなものもないしな。当然と言えば当然ってことか。」
リーネは頷きながら言った。
「そうね。だけど、魔力のバランスを調整するのは簡単なことじゃないわよ。この世界の核に干渉する必要があるから、一歩間違えるとさらに悪化する危険性もある。」
セイルはまず、この世界全体の魔力の状態を把握するため、世界の各地を調査することにした。リーネの指導を受けながら、魔力を視覚化する術式を用いて世界の地図を作り出した。
「これが、この世界の現在の魔力の流れか…」
目の前に浮かび上がった光の地図には、均一で滑らかであるべき魔力の流れが、まるで壊れた水路のようにあちこちで滞り、渦を巻いている様子が映し出されていた。一部の地域には魔力が集中しており、別の地域ではほとんど枯渇している。
「これじゃ草木が育つ場所と育たない場所が出てくるのも当然だよな。」
リーネが地図を指差しながら説明を加えた。
「見て、特に酷いのはこの世界の中心部。ここが滞っているせいで、全体の流れが乱れているわ。」
「じゃあ、まずはこの中心部をどうにかする必要があるってことか。」
「その通りよ。ただ、中心部がこんな状態ということは、やっぱり核も相当傷ついているはずよ。気を付けてね。」
リーネの言葉に導かれ、セイルはさらに調査を進めた。そしてついに世界の中心部に隠されていた「核」に到達した。それは、この世界のエネルギーの源であり、魔力の循環を支える基盤である。だが、その核はひび割れ、歪み、荒廃していた。
リーネが眉をひそめて言った。
「これは…思っていたよりさらに酷いわね。この状態では、どんなに表面を修復しても魔力は安定しないわ。」
セイルは深く息をつきながら言った。
「となると、先にこれを修復しないといけないのか…でも、そんなことができるのか?」
リーネは少し考えた後、静かに答えた。
「理論的には可能よ。ただし、核を修復するには繊細で高度な魔術が必要だし、一歩間違えれば核そのものが崩壊してしまう危険性もある。」
セイルはリーネと協力して核を修復する術式を組み上げることにした。核に魔力を注ぎ込むだけでは解決できないため、核のひび割れを埋めるような細やかな方法を編み出さなければならなかった。
「これでいけるはずだ…!」
セイルは核の中心に向かって魔力を注ぎ込んだ。魔法陣が光を放ち、ひび割れた部分に魔力が流れ込む。だが、その途端に核から強い反発が生じた。
「くっ…!また跳ね返された。」
セイルは大きく息をつき、汗を拭った。リーネが冷静に状況を分析し、助言を送る。
「核の反発は、内部の魔力の乱れが原因ね。一度に修復しようとするのではなく、もっと小さな部分に分けて調整したほうがいいわ。」
「わかった。少しずつやってみる。」
セイルはリーネの助言に従い、核を部分的に修復する方法を試みた。繰り返し失敗を重ねながらも、少しずつ核のひび割れが埋まっていった。
度重なる試行錯誤の末に、ついに核のひび割れの一部が修復され、核が穏やかに輝きを取り戻した。そして、核から発せられる魔力が滑らかに世界全体へと広がり始めた。
その結果、空はさらに澄み渡り、大地には新たな緑が芽吹き始めた。セイルはその光景を見ながら微笑み、肩の力を抜いた。
「やっと、少しは形になってきたな。」
リーネも満足そうに頷いた。
「核の修復が進めば、この世界も自然の循環を取り戻せるわ。」
セイルは決意を新たにした。この世界の再生は、まだまだ道半ばだ。しかし、確かな一歩を踏み出した彼の目には、明るい未来が映っていた。
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