死に惑う
杵築
第一章 ただ死を願う-1
救いの手なんて無い、そう気付いたのは何時のことだっただろう。
小学生の頃はヒーローとしてみんなを守る、なんてこと言っていた記憶はある。だけどそんなのは叶わないし、誰も彼もヒーローになれると言うほどこの世界は優しくはなく残酷だ。
「っ…痛」
殴られ、蹴られ。ただ痛みしか感じることの出来ない悲しみ。
「惨めねぇ全く。」
世界は、残酷で理不尽だ。
こんな虐めて快楽を得る外道が富を得て、裕福に楽しく過ごしていて、俺は虐められている側でただの普通の…家で傷ついているのに傷つくだけで神様は何も俺に与えてくれない。
「また明日来なさいよ、しっかり虐めてあげるから」
女は舌を舐めずりし、裏校舎から去っていった。
ああ、また明日もこうなるのか。そう思いながら俺は保健室へ向かった。
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「あいっかわらずマゾだねぇ、志貴君。いつもより酷いじゃない怪我」
はは、と笑いながら俺に消毒をかけてくるのは保健室の先生。
「しょうがないじゃないですか…助けるためにはこれしかないんです」
「"助けるためには"?、その子は助けを求めてるの?貴方に助けてって言ったの?……一方的な自己犠牲精神は身を滅ぼす原因になりうるよ?」
「それでも……俺は__」
「あぁ聞き飽きたよ気持ち悪い、嫌悪感しか抱けないなぁ。人生の先輩として助言するけど求められてない犠牲はいらない一切の必要はない。そんなことはしなくていいんだよ」
そう言って先生は湿布を貼る。
「だから…!俺はそんな気持ちは…」
「あと、相当精神に来てるでしょ。目の下まだ薄いけど隈あるしわかりやすいよ。本当にストップした方がいい、休学届け取っても良いとは思うよ」
俺は反論は出来なかった、出来るはずもなかった。
全てが正論で全てが的を得ている。
「はい治療終了っと、さっさと帰んなガキ。それか落ちるのか?」
「落ちるって…なんのこと言ってるんですか。俺はそんなことしませんよ」
じーーっと先生は俺を見てきた。
「………さっさと子供は帰れーー」
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「母さん、ただいま」
そう言って俺は椅子に座っている母さんに話しかける。
「あら志貴おかえり!、今日はお父さんが早く帰ってくるらしいからみんなで一緒に食べましょうね!」
母さんは病気に苛まれている。
父さんの死をきっかけに見えていないはずのもの、死んだはずの父さんが母さんには見えている。
「今日はハンバーグ作るわね、志貴は勉強してきなさいね」
2人しかいないのに3つ用意された皿。
「うん勿論だよ」
母さんはいつあの幻影から解き放たれるのだろうか。
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作者の杵築と申します。
久しぶりの作品でブランクもありますので
温かい目で見ていただけると嬉しいです。
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