1393 沙那ちゃんの普段の生活
話をしている内に、沙那ちゃんが『学校に行った事がない』事が判明。
それに驚いた倉津君は、どうしてそうなってるのかを、軽い感じで聞き始めるのだが……
***
「はい?じゃあ学校には全然行った事がないのか?」
「うん。行った事ないよぉ。んとねぇ、住所なんとかって奴で、沙那は学校に行けないんだって」
「住所不定か?」
「うん、それそれ。凄い凄い、おにぃちゃん物知りだね」
無茶苦茶じゃねぇかよ。
自分の仕事に娘を連れ回して学校に行かせないなんて、常識を外れすぎるにも程があるだろ。
まぁ、他人の家庭の事情に首を突っ込むのもなんだけど。
これはあまりにも可哀想だろう。
「学校には行きたくないのか?」
「行ってみたいね。どんな所なのかなぁ?」
「いや、どんな所って聞かれても。勉強したり、友達と遊んだりよぉ」
「勉強?楽器の作り方?」
オイオイオイオイ、なんだそりゃあ?
この分じゃあ、学校に行かせてない処か、基本的な勉強すら全然教えてないのかよ。
嘘だろ。
俺としては、住所不定で学校に行けなくても、最低限の知識は親父さん教えてるのかと思ってたんだが、どうやらそうじゃないらしい。
それに、あの親父さん、こうやって沙那ちゃんに楽器の作り方だけを教えてるって事は。
将来、自分の培ってきた技術を沙那ちゃんに叩き込んで、この子をビルダーにする事しか考えてないんだな。
しかしまぁ、これが事実なら、なんて自分勝手な親だよ。
娘に将来の選択権すら与えないなんて、マジで信じられねぇ。
親って言うのは、子供の夢を叶えてやる為に居るもんじゃねぇのかよ?
まぁ、言うても……考えてもみれば、ウチもよく似た環境だからなぁ。
俺も生まれた瞬間から『ヤクザの親分』になる事が確定してるもんなぁ。
だからこそ、余計、沙那ちゃんにこうやって情が沸くのかもしれない。
……っと、そんな事よりもだ。
まずは学校が、どういう組織なのかっと言うのだけでも教えてあげないとな。
ってな訳なんで。
まずは簡単に、学校の勉強について説明してみるか。
「いやいや、学校は楽器作りをする場所じゃなくてだな。数字を足したり、引きたりする算数とか、本を読んだり、漢字を憶えたりする国語とか、世の中の仕組みを教える社会とか、自然の法則とかを学ぶ理科とかを学ぶ場所だな」
小学校低学年で習う勉強を簡単に説明するなら、こんな感じで良いんかな?
出来るだけ簡略して話してはみたんだが。
最後に説明した理科の概要は「自然の法則」とか言っちまったから、少々沙那ちゃんには解り難いかもしれんな。
「なにそれ?全然わかんない???」
ヤッパ、解らなかったか。
って言うか、サッパリ解らなかったか。
「いやまぁ、それが学校でやる勉強って奴なんだよ」
「ふ~~~ん。そうなんだ。なんか面白そうだね」
いやまぁ、決して面白いって代物ではねぇんだがな。
最低限知ってさえいれば、社会に出てから、ある程度は恥を掻かないレベルの知識としては有用だな。
まぁ、それ以外では専門職にでも付かねぇ限りは、ほぼ役には立つもんでもねぇんだが、矢張り常識的に知って置くべき物だとは思う。
まぁまぁ、この辺については、今の沙那ちゃんに言ってもわかんねぇだろうけど、なんだか興味は持ってくれたみたいだな。
意外と探求心が高いみたいだ。
「まぁ、それはそれなりにはな」
「そうなんだ。……ねぇ、ねぇ、おにぃちゃん」
「うん?」
「それって、楽器を作るより面白い?お父さんは、楽器を作るのが一番面白いって言ってたけど。それより面白い?」
むむむ……これは、なんて答えたもんだ?
俺的に言えば、ちっとも面白くないもんなんだが。
こうやって沙那ちゃんが、折角、勉強に興味を持ってくれたのに、此処で「面白くない」って言うのも違う様な気がするし。
まぁけど、その面白くない理由ってのが。
『勉強の内容がわからないから面白くない』だけであって、理解さえすれば徐々に面白くなってくるものだから、そういうのを踏まえた上で説明してみるかな。
上手く説明出来るか、どうかは解らねぇが。
「どうだろうなぁ。まぁ、始めたては、そんなに面白くはねぇだろうけど、慣れてくりゃ面白くなるかも知れねぇなぁ。そんでなにより、知ってて損はないと思うぞ」
「ふ~~~ん。そうなんだ。変なの」
沙那ちゃんが不思議そうな表情を浮かべてると言う事は、あまり上手く伝わらなかったみたいだな。
矢張り、勉強って言う概念がないのと、俺の説明下手さでは、所詮はこんなもんか。
けど、なんか、学校の事で、こう言う反応しか出来無いのって、ヤッパリ可哀想だよな。
普通、この年代の子供なんて、勉強もロクにしないで、馬鹿みたいに友達と遊んでワイワイ騒いでるもんなのにな。
それを知らずに、楽器作り1本で生きて行くなんてよぉ。
なんか違わないか?
俺は間違ってる様な気がする。
それになによりなぁ。
学校に於ける人間関係なんてものも、ある程度は知って置かないと、将来、社会に出た時に滅茶苦茶苦労すると思うんだよなぁ。
一応、学校は、そういう情操教育の場でもある訳だしな。
まぁ、そうは言ってもなぁ。
それぞれの家庭の事情とかもあるだろうし、親父さんには親父さんなりの考えがあっての行動なのかもしれない訳だから。
今はもぉ、これ以上突っ込んだ話を、沙那ちゃんにするべきではないのかもしれない。
この辺が潮時だな。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【後書き】
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
学校に行った事がない沙那ちゃん。
これは、かなりヤバいですよね。
しかも、その学校に行けない理由が、住所不定であり。
お父さんの仕事にずっと付いて行ってるから、っと言うもの。
なかなか救いがないですね。
さてさて、そんな沙那ちゃんとの会話も、一旦は終了。
そろそろお父さんが帰って来ると思うのですが……果たして親父さんは、今の今まで、なにをしていたのか?
その全貌が、次回明らかになりますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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