鬱エロゲでモブ転生!ヒロインを闇落ちから救ったら大人気になりました。
田中又雄
第1話 モブ転生してしまった日
目を覚ますと、そこには見知らぬ部屋が広がっていた。
部屋の中には有名な漫画や小説がずらりと棚に飾ってある。
これは...夢か?もしくは、転生か?
ということで、まずは鏡で自らの顔を確認してみる。
そこには自分でもなければ、ゲームのキャラでも見たことのない、何とも平均的な顔の男の子の顔があった。
...どうやら答えは後者であり、更にモブ転生したらしい。
「...よりによってモブ転生かよ...」
ガッカリしながらも、現状を把握する。
まず、何のゲームに転生したのか...だが...。
それは言うまでもなく、恐らく超やりこんでいた鬱エロゲー【あなたの世界に入りたい】だろう。
この鬱エロゲーはエロゲーとしては名作と呼ばれていたが、
次に、携帯電話で現在の日付を確認する。
【2023年6月10日】
つまり、これは鬱が始まるちょうど1年前の世界ということだ。
課されたミッションなどは特にない。
ということは、自由に行動していいということか...?
と、なれば俺のやることは一つ。
あの不遇で不幸で不憫な彼女たちを救うことだ。
モブの自分に何ができるか分からない。
しかし、彼女たちの抱える闇を知っている俺になら...。
そう心決めて、俺は学校に向かった。
◇8:15 1-B
学校に到着する前に色々と情報を確認していた。
まず、学校への道。
これは携帯のGPSを使えば一発であった。
次に自分の名前。
これも財布の中にあった学生証を見ればすぐに名前もクラスも分かった。
どうやら、主人公たちと同じクラスらしい。
最低限の情報は手に入れたわけだが、クラスで誰と仲が良いとか、そんな情報に関しては不明であった。
アドリブ力か...。
そうして、下駄箱で自分の名札を確認し、履き替えて教室に入る。
そうだ。自分の席...と、壇上に置いてある座席表の紙をチラッと見る。
どうやら窓際一番後ろという、主人公的な座席に座っているようだ。
そして、その前の席にこの作品の主人公が座っていた。
名前は
エロゲの主人公にぴったりな平凡さ。
更に鈍感さを兼ね備えたエロゲらしい主人公である。
その隣にいるのが、彼の親友であり、この物語を壊し始める諸悪の根源である
ヒロインたちを次々に寝取っていく竿役というやつだ。
そして、反対側の廊下側には4人のヒロインがいる。
黒髪ロングヘアで清楚系であり、上品な出立ちをしている正統派ヒロインである。
性格は常にやや冷たい感じではあるが、本心では相手の気持ちを色々考えている優しい女の子。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088764281892
白髪ミディアムヘアで無口でおとなしい女の子だが、綺麗な容姿で作品1の人気ヒロインである。
親しくなるまで時間がかかるが、仲良くなると距離感がバグり、積極的になる可愛い女の子。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088764007457
青髪ショートヘアでイタズラな笑みがよく似合うヒロインである。
コミュニケーション能力が非常に高く、男女共に友達が多い女の子。彼女にいじめられたいという男性が急増していた。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088764149776
桃色ロングヘアで優しくておっとりとした笑顔が魅力的なヒロインである。
マイペースで何をされても嫌な顔をしない天使のような女の子。
【挿絵】
https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088764281892
こんな魅力的なヒロインたちが最後にはあんなことになるなんて...。
いや、絶対に阻止してやる。
何ができるか分からないが、やるしかない。
そうして、モブの俺は決意を固めた。
◇
...と、カッコつけてみたが、初日は何もできなかった。
収穫といえば、このモブキャラである、
現時点では主人公たちとヒロインに接点は何もない。
まず、俺がするべきことはヒロインと主人公及び親友のあいつが接近することを防ぐこと。
さて、どうしようかと、家に帰る前に公園によって作戦を立てることにした。
ベンチに腰掛けていると、視線の先に1人で帰宅している白乃山さんを捉える。
よし、まずは当たって砕けろだ。
とりあえず、話しかけてみよう。
確か、彼女の家庭環境はかなり複雑で、両親は彼女が幼い頃に交通事故でどちらも亡くなった。
まだ幼かった彼女は両親の弟夫妻に引き取られることになった。
その弟夫婦の奥さんは子供が授かることができない体ということもあり、彼女を喜んで引き取った。
しかし、何年経っても彼女と弟夫婦の心の隙間が埋まることはなく、少しぎこちない関係が続いていた。
だから、平日は友達の家や図書室などに時間ギリギリまで粘って、家に帰ってきたらご飯を食べて、お風呂に入って、寝るだけだった。
そんな現時点では嫌な空間なのだが、1年後にその弟夫婦が2人とも鬱になったことで、更に地獄のような空間になる。
と、なれば...俺には一つ力になれることがある。
それは彼女に居場所を提供することだ。
そう、どうやらこのモブキャラは高校生のくせに一人暮らししていたのだ。
だから、いつでも居ていい場所を彼女にあげる。そして、距離を縮めるのだ。
そうして、俺は彼女の元に走った。
「あ、あの!白乃山さん...!」と、声をかける。
すると、振り返り俺の顔を見て「...えっと...誰?」と、小さく呟く。
どうやらクラスメイトという認識すらなかったらしい。
「あっ、同じクラスの...
小首を傾げられてしまう。
名前すら聞いたことがなかったようだ。
「...それで?何の用?」
第一声が大事だ。
彼女の興味を引けるような...。
確か彼女の趣味はアニメ漫画と推理小説...。
そして、彼女はアルバイトをしておらず、夫婦から毎月貰えるお小遣い2万円で生活していた。
このモブの家にあった物から興味を引けそうなのは...。
その瞬間、彼女のカバンについた人気漫画のキャラが目に入る。
そして、ゲーム内の彼女の部屋の中にはあまり新しめの漫画がなかった方に気づく。
これしかない。
「う、うちに...その...漫画が全巻あるんだけど...来ない?」
そう言葉を発した瞬間、しまったと思う。
女性経験のなさが出た。
いきなり、クラスメイトとも認識していなかった男子クラスメイトの家に行くわけがないだろう。
冷や汗が全身から溢れ出る。
下手すればヤバいやつ認定されて、そのまま距離を置かれるかもしれない。
「...そっか。それは見たいかも」と、何とか興味を引くことに成功した。
「そ、そう!?じゃあ...いこっか」と、何とか家に招くことに成功したのだった。
次の更新予定
2024年11月19日 00:15 毎日 00:15
鬱エロゲでモブ転生!ヒロインを闇落ちから救ったら大人気になりました。 田中又雄 @tanakamatao01
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