続・八幡戦士(HACHIMANSENSHI)
やまのでん ようふひと
第1話 天動地動 その1
「タケルよ。
数種2種の年を迎えました。
今年はその主旨に則り天と地を動かし整えを行います。
従って生態系への影響はやむを得ないところがあります。
特に人類にあってはその在り様が対象となります。
またそなたの働きが必要です」
「承知しました。
ここで八幡神に一つお尋ねします。
この度の策で『
「天はそれを選択肢の一つとしています」
八幡神はタケルに伝えた。
かつて恐竜は進化の態様が因となり鳥類以外の種は「滅後の生」の対象となり絶滅させられた。しかしその策が検討されるまでには恐竜の誕生から1億6000万年もの時が流れていた。
では、今回はどうか。
人類(ホモサピエンス)の在り様を対象としてこの会話がなされたのは、人類が誕生してからたかが20万年余、たったこれだけなのである。
恐竜と比較すれば、余りにも早すぎる。
人類は地球にとって急性悪種と判断されてしまっているのだろうか。
もしそうであるならば、この会話は人類を完全に除去するかもしれないという、我々にとって極めて
さて昨年は八幡神が末法の世を正法の世へと建て直すとの意を決した起の年、つまり数種1種の年であった。
その一環として昨年は八幡神が見込んだヒンジらを八幡戦士として誕生させ、人類の転生を試みた。そのヒンジらは八幡神の意を汲み、神仏と意を一つにして大きな働きを果たすことが出来るようになった。
そう、
(この経緯を詳しくお知りになりたい方は、前作「八幡戦士」をお読みくだされ!)
そして年が明け2種の年となった。したがって今年が整えを主旨とする2種の年となるのは昨年からの一連の流れではある。
ではこの年、人類はどう在ればいいのか。
「滅後の生」を逃れるために。
それは三輝一動に心する者、つまり八幡神と共に生きる心を持つ八幡子が増殖するかが重要なポイントである。
もしこの増殖が叶わなかった場合は・・・
滅後の生!
ただそうしない為に誕生させたのが八幡戦士の筈だ。
何故なら八幡戦士は八幡神が自ら建て直しのために誕生させたのだから。
もしそこに一分の望みもないのであればわざわざ誕生などさせる訳が無い。八幡神だって自らの子である人類を全滅などさせたくはない筈だ。
そこに望みをつなげたい。
・・・・・・・・
「ヒンジ、そなたに伝えておくべきことがあります」
除夜の鐘を聞いて寝床についたばかりのヒンジに、八幡神が語り掛けた。
「八幡さん。おめでとうございます」
「おめでとう。
今年は2種の年。この年の主旨を理解していますか?」
八幡神はそうヒンジに問いかけた。
「整えが主旨の年と承知しております」
ヒンジは寝床から起き上がり正座して答えた。
「その通りです。
因って様々な目を覆いたくなるような動きが本年中に現実のものとして身の回りで起こって来るでしょう」
語り口調は静かだったが話の内容にヒンジは
2種の年の年意をさびわけてはいたものの、天がとる2種の動きとは実際どのようなものか、見当がつかない。
「お尋ねします。
ヒンジは率直に八幡神に問うた。
「気を揉むのはもっともです。
質問に答える前にそなた達に
第一は、我への信の揺るぎなきを心得ること
第二は、2種の動に備えの怠りを無きように」
話の内容は、八幡神が自分たちに配慮してくれていることなんだと思えた。
「八幡さんへの信が揺るぐことなど、あろう筈がありません」
ヒンジは自信をもって返答した。
「ではヒンジの質問に答えましょう。
天はこれまでと違った様相を見せます。
例えば長きに渡り雨を降らせ、気を冷やします。またその逆もあるでしょう。
その程度については如何程か決まっている訳ではありませんが、これまでよりそれなりに強くなることは必至です。
地は大きく揺れ、大地が割れる。そこは多くのものを飲み込むかもせれません。
天の2種の動きとは、時に容赦のない激しいものでもあります。
ただし人々の在り様によってその様相は異なるでしょう。その在り様に変化の現れない場合は、結果として多くの人々は大きく不安を募らせ、世相に混乱を巻き起こすでしょう。
ただそなたたちには常に5種、つまり守護の法が動いています。
でもこれらの動きに巻き込まれることのなきよう備えは必要です。機を読み、状況をよく察し対処なされよ」
八幡神は一気に話した。ヒンジはその内容に、やや物足りない感覚を覚えた。
「自分たちはただその様子を見ていればよろしいのでしょうか?」
ヒンジは三輝一動の一つの輝として本尊の動きに同動したいとの思いがあったのだ。
「そうではありません。
2種成就が為には、そなたたちの八幡戦士としての働きが必要になります。
但しくれぐれも自らの役割を心得て、慌てず、三輝一動に
これに心掛けなされよ」
以上で八幡神の話は終わった。
ヒンジは八幡神に感謝の意を伝え、床に入り目を閉じてみたが全く眠気が飛んでしまっている。
「自分には守らなければならない大切なものがある」
愛おしいとの思いが募った。
ヒンジは大きく息を吐いて天井を見つめ、八幡神の言葉を噛みしめた。特に二つの言葉が脳裏から離れなかった。それは「人々の在り様」と「自らの役割」だった。
先ず「在り様」について考えた。
それは人々の神々をも縛してしまうような得体の知れない欲望などを指しているのだろうか、と考えた。
これには自分の力ではなかなか対処が難しいと思わざるを得なかった。でも何か行動を起こさなければいけないのだろうとも考えた。
何故なら八幡神は在り様の変化があれば云々と言ったのだからと思ったのである。
次に昨年、「自に与えられた役割」を顧みた。
「これからも羅動と化した淀みを清浄に転化させる役をしっかり果たしていく。これが大事なんだろう。
ただ『自らの役割を心得て』と言われた。くれぐれも分を超えてはいけないということだろう。このことをしっかり心しなくてはいけないな」
ヒンジは考えをそのように整理した。そして妻や弟子達にも八幡神からの話をしっかり伝えておかなければいけないと考えた。
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