第2話
待て待て待て、俺は冗談を言ったんだぞ?
それと言うよりも思いつき、
思いつきを言ったんだ。
俺は悪くない悪くない。
『でもすごくないですか?
なんでこんな能力隠してたんですか?』
俺だってそんなこと知らないよ、
偶然だ、偶然彼女は命を落とした。
その偶然の日だったんだ。
まてよ、おい待てよ、
これをお金にできないか?
いや出来るとも、テレビにも引っ張りだこだ、
これを使おう、ああ、これを使おう。
しかしながらデメリットも多い。
下手したら疑われる。
俺が殺したってことになる。
いやいやいや、俺だけの個性だ。
その疑った奴を殺せばいい。
そんな単純なもんだろ?
殺せ殺せ、俺に従うんだ。
「ああ、隠していたさ」なんてことで
カッコつけてんだ。
よし、ネットの声を見てみよう。
『新世界の神現るw』いいねそうだよ、
おれはいずれそうなる。
『やばい新興宗教作れそう』
そうだ俺は教祖にもなれる。
『ねえ、九辺さん、
明日の予定取材ばかりです』
そうだ、いち早く俺を青田買いしろ。
いいんだぜいいんだぜ、
俺をとっととテレビに出せ。
俺をどんどん売るんだ。
♦︎
よしよし、次の取材だ、
こんなにも世間の声が聞こえるとはな。
過去最高に仕事をしてる。
俺は未来を見ることが出来るんだ。
どんどんどんどんかかってこい。
まるで俺はVIP様かよ、底辺芸人さよならだ。
俺は成功者だ。次の取材は生放送?
なんでもいい。かかってこい。
あの芸人もあの芸人も、
届くはずはないと思ってた。
みろよ、俺は同じ舞台にいる。
1日前の俺、やってやったぜ。
こうやって俺はのしあがるんだ。
深々と頭を下げる。礼儀ってもんだろ?
これからお世話になる芸能界様よ。
やべえ緊張する。緊張してきた。
手の震えが止まらなくなってきた。
カメラと見つめ合う。
いやいやいやいや素人丸出しだ。
胸を張ろう。うん、胸を張る。
俺に振られるぞ、きた、目線がこちらに。
『昨日の特番で見事未来を当ててしまったターゴイズモンスターの九辺さんです。
よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
いいぞいいぞ、俺、
このまま芸能界でやってやるんだ、
やってやるんだぜ。
『未来が見えるようになったのはいつからですか?』
あー、お世話になってます。
子供の頃から見てました。なんて言えない。
うんうん、そうだ、質問だ。
昨日から、なんて言えない、
どうするか、どうするか。
「20歳の頃からです」
いっちまった、、これも嘘だ。
『どういった経緯で?』
聞かれると思った、経緯なんて、分からない。
っていうかなんでこんなことしてんだ俺は。
答えなきゃ答えなきゃ。
「突然、舞い降りた感じで」
ベタなことを言ってしまった。
どうするべきかどうするべきか。
後には引けない。後には引けない。
『他にはどういったことが見えるんですか』
やべえ、やべえ、全く考えてなかったよ。
落ち着け俺、落ち着け俺落ち着け。
『何か、見えてる未来はありますか?』
こうなったらヤケクソだ。適当に行こう。
「今からこのセットの一部が落ちます」
『うわびっくりした』
『本当に落ちたよ』
『すげえすげえ』
本当に俺は持ってる?
とんでもない力を持ってしまっているのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます