16 関 ――検証――



「関さん」

車椅子を見送り、茫然としていた関が、穏やかな橿原の言葉に我に返ったように瞬く。

それだけで、先に既に地下室への階段を降り始めている橿原の背に、はっとしたように関が目を見張り、一度閉じて首を振る。

関が息を吐いて踵を返す。そのまま無言で後を追っていく関に、斉藤が山下の肩を叩く。振り向いた山下が頷き、地下の資料室へと下りていく橿原と関を、斉藤と山下が追い掛ける。




 斉藤が無言で地下資料室―――つまり、過去の事件の記録を保管している部屋へと迷いなく入っていく長身の背を二人分見送って。

 ふと、足を留めて隣の山下をみる。

「な、普通に考えて、こいつはまずくないか?」

「何がです?」

疑問に思っていない山下を、斎藤がしみじみと見詰める。

「いや、そのな、…。関はうちの刑事だからいいぞ?けど、…―――橿原先生って、法医として協力とかもしてもらっちゃいるが、―――まずくないか?」

「…―――斉藤先輩」

「おまえにそう呼ばれると不吉なんだが」

「法医として以外に事件解決に関して、橿原さんに課長がお願いとかしてるのって、いまさらですよ?」

「…クールだね、おまえさん、…。」

「それと、鷹城さんにほいほい情報話してたの、斉藤先輩じゃありませんでした?今回の件。先輩が何処へ行ったか、いってたでしょ」

「…―――」

無言になる斉藤に山下があっさりと背を向ける。

「お、…おいっ、…―――くそっ、」

斉藤が慌てて山下の背を追って。



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