#4 宝くじが当たる。

 俺、タクローはぼんやりとテレビを見ていた。宝くじだ。


「1等は58組A384964、賞金8億円。組違いは83本、賞金350万円……」


 俺は――え、組違いだった!


「350万……?」


 と思い怪しみながら売り場に行くと、「あ、組違いじゃありませんね」と告げられた。

 なんだ、組違いじゃなかったか――なぜかうなだれている俺を前に店員は続ける。


「おめでとうございます! 1等です!」


           *


 一瞬、何のことかわからなかった。そして、ようやく――ああ、自分は8億を手にしたのだ、と事態を飲み込んでいく。


 しかし俺は大事なことに気づく。一番高級すぎるのも考え物だな、と。俺は前みたいな、少しいいくらいの生活が好きだ。


 俺はとりあえず大手企業の株を買った。うまい具合にその企業は不祥事と言えるか言えないかぐらいの小さな事件を起こした。株が少し落ちた。適当なところで株を売った。4万円ほど損した。


 しかしちょっと悲しいのでこのくらいで止めておいた。5億円は銀行に運用した。手数料で数百万差し引いても4億数円は残るだろう。残りの3億円は貯金。このために貯金箱を何十個か買った。


――では、豪華ライフに、行ってきます!


 そう言って俺は、いつもの一軒家の玄関のドアをぐるり、と回した――。

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