プロポーション詐欺するお嬢様が可愛すぎて仕方ない!
青キング(Aoking)
プロローグ(アイリーの日常)
うちのお嬢様は可愛い。
東ワパール共和国で有数の貴族で名高いコルセリート家に執事として仕えるハルヤ・スタルツェは、お嬢様を乗せた送迎車を運転しながら心の中で呟いた。
コルセリート家の令嬢アイリー・コルセリートはハルヤにとっていわば主だ。その主に対して執事ごときが可愛いなどと気安く言えないが、ハルヤはつくづく自分の認識が間違っているとは思わない。
アイリー・コルセリートは、学園での成績は優秀、上品で清楚な物腰に聖女かと見紛うほどの美貌と加えて絹のように滑らかなブロンズの髪を持ち、さらには世の女性が羨むような美しく女性らしさに溢れた肢体さえも備えた正真正銘のお嬢様だ。
そんな完璧な令嬢であるアイリーには、執事のハルヤと専属のメイドである女性だけが知る秘密がある。
その秘密を知っているからこそ、ハルヤにとってアイリーお嬢様は可愛くて仕方がないのだ。
「ハルヤ、そろそろ車を停めてくださる?」
最後尾の席に腰掛けるアイリーが運転席のハルヤに言った。
かしこまりました、とハルヤは返してから学園の門より少し離れた路傍に送迎者を停車させた。
車が停まるとアイリーの隣で持していた専属のメイドが立ち上がり、送迎者のドアを開けて外へ出た。
席から立ち上がりかけるアイリーへメイドは恭しく外から掌を差し伸べる。
「アイリーお嬢様。段差に気を付けて」
「わかってるわ。毎回大袈裟よ」
気を遣われることに少し申し訳なさを覚えているような口調でアイリーはメイドの手を借りて車を降りる。
今のお嬢様は誰が見ても、容姿端麗、品行方正、非の打ちどころのないコルセリート家の令嬢だ。
ハルヤも運転席を降りて車外に出たアイリーに上品な笑顔を送る。
「お嬢様。学園で何かございましたらすぐにご連絡ください。迎えに参ります」
「いつも言ってるけど、呼んでもないのに来ちゃダメよ」
「はい。わかっておりますとも」
「それでは、行ってまいりますわ」
「お気をつけて」
ハルヤは学園のある日は毎度お馴染みのやり取りをしてから学園の方へ歩き出すアイリーを見送った。
今日もお嬢様の秘密が露見しないことを願おう。
アイリーの尊厳のためにハルヤは信心がないにも関わらず祈った。
送迎車の運転席に戻ってメイドが乗り込むのを見てから邸宅への道を引き返した。車の操舵輪を持つハルヤの頭には可愛くて仕方ないアイリーお嬢様と出会い秘密を知ってしまった日のことが思い返された。
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