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扇谷悠花、15歳。
ごくごく普通の高校1年生……ちょっとぽっちゃり気味だけど。
頑張って歴史ある私立高校に入ったものの、やはり不相応な選択だったようで成績は後ろから数えたほうが良いくらい悪い。
なんとか赤点は回避しているものの、授業は意味わかんないことだらけ。
出席日数を満たして授業料さえ払っておけば卒業は必ず出来るらしいので安泰っちゃ安泰なんだけど…
学園生活は穏やかに過ごせるものでもないのです。
非公開で書き始めた
一生誰かに見せるつもりはないけど、誰かに語りかけるような文章にしようかなと思っている。なんとなく、そんな気分なだけ。
「悠花〜、お昼ご飯食べに行こうよ」
ツインテールの金髪を揺らしながら
舞音は146cmと小柄な可愛らしい女の子だけど、耳には8つもピアスの穴が開いていて、
「久しぶりに南館のカフェテリアに行くか、いつもみたいに地下の食堂に行く? 今日は月曜日だから日替わりランチはクリームコロッケかな?」
「クリームコロッケ!」
「悠花はあのクリームコロッケ大好きだもんねぇ。地下にしよっか!」
「うん」
見た目で誤解されがちだけど、舞音は明るくてとってもいい子だ。あまり食に興味がないらしく、いつも私の好みを優先してくれる。
舞音はチラリと視線を横に向け、「
「……おう」
授業中から居眠りしていたほ
「起こすの遅くね? 食堂に行っても席空いてんのかな」
「しょうがないじゃん、うちのクラスは体育だったから着替えに時間掛かったんだよ〜」
舞音は隣のクラスなので時間割が違う。
「舞音もこのクラスが良かったな。炎はどうでもいいけど、悠花と一緒に実験とか調理とかしたかったもん」
「……どうでもいいとはなんだよ」
「舞音にとっては炎は悠花のオマケにしか過ぎないし」
……この2人、いつもこんな感じだけど仲が悪いわけではないらしい。
喧嘩になるわけでもなく言い合いをしてコミュニケーションを取っているようで、それに耳を傾けながら食堂へと移動する。
舞音ほどではないにしろ、炎河も
チラチラとこちらに目を向ける視線を感じながら「気にしない、気にしない」と心の中で念じて食券の自販機の前に並んだ。
「混んでるから3人では座れないかも」
出来上がった料理を受け取ったものの、揃って座れそうな空きが見当たらない。
「あそこ2人なら座れるね。炎はどっか探して、もしくは椅子無しで」
「なんでだよ」
誰か1人は別のところになりそうでどうしたものかと考えていると周りのざわつきに気付いた。
「あっ、大和
「こんにちは。座るところ見つからないの? 良かったらこっち1人空いてるよ」
眉目秀麗と言われる顔が微笑むと、どこからともなく女子が小さな悲鳴を上げた。
大和さんは舞音たち以上に目立つ。見た目は少女漫画から飛び出してきたような王子様で、生徒会長なんてものをやっているのだから知らない人間はいない。
色素の薄い茶色の髪と瞳は生まれつきで、神様はよく考えて作り上げたものだと感心してしまう。ぼんやりとそんなことを考えていると「悠花ちゃん、おいでよ」と手招きされた。
「えっと……」
舞音は大丈夫かなと横を向けば、とっくに空いていた席に炎河と座っていた。いつの間に!?
「そこは
「ごめんね、みんなで座れたら良かったんだけど」
「……いえ、ありがとうございます」
誰と食べているのかと思ったら、生徒会の先輩方だったので一瞬頬が引き攣りそうになった。学園の人気者勢揃いじゃん……。
顔や家柄で選んだのか?ってくらいハイスペック揃いの先輩たちのファンは多い。嫌〜な感じの視線を背中に感じるのは気のせいじゃない。私の悪口が聞こえてこないだけマシだよね……。
「先輩方、すみません、お邪魔します」
「謝らなくていいのに。悠花ちゃんは律儀だよね」
ふふっと大和さんが笑う。
長方形型の長机を挟んで、彼は私の正面に座った。オムライスを食べていたようで半分ほど手を付けていたから、私たちを見つけて食事を中断してくれたのだろう。
「大和さん、ありがとうございます」
「なにが?」
この人にとっては何てことないんだろうけど、困っている人を見つけた時の行動力が凄いんだよな。電車とかでもスマートに席を譲るタイプ。
「ほら、冷めないうちに食べて」
「そうですね、いただきます」
楽しみにしていたクリームコロッケから口に運ぶ。大量に作っておいたものなのか、少し冷めてはいるけれどとろとろでクリーミーで美味しい。
「美味しい? って聞くまでもないか」
「……はい」
よく大和さんに「悠花ちゃんは美味しそうに食べるね」と言われる。何かを食べている時にとても幸せそうに見えるらしい。食いしん坊でごめんなさい……。
恥ずかしさに目を伏せた。
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