第2部: 家計を圧迫する現実

「今月も医療費がこんなにかかってしまった…」。その言葉を聞くたびに、家計簿の数字以上の重さを感じる。病院の領収書が増えるたびに、他の出費を削らなければならない現実が、私たちの生活をじわじわと侵食していく。


医療費は家計の固定費に近い存在だ。それがいくら高額でも、治療を諦めるわけにはいかない。しかし、その支出が他の必要な費用、例えば食費や光熱費、趣味や娯楽に向けるお金を圧迫しているのが現実だ。家族の健康を守るための出費が、生活の余裕を奪い、心の安定さえ揺るがしている。


ある月は、母親の糖尿病の治療に必要な薬代、通院費、検査費が家計を圧迫した。次の月には、父親の腎臓病による透析費用が大きな負担となる。どちらも欠かせない治療だが、そのために家族旅行の計画が先送りになったり、食卓に並ぶ品数が減ったりする。そんな小さな「犠牲」が積み重なり、生活そのものの質がじわじわと下がっていく。


さらに厄介なのは、医療費が単純な数字の問題にとどまらないということだ。お金の問題が心理的なストレスを生むのだ。母親は「私の治療のせいで家計が苦しい」と肩身を狭く感じ、父親も「家族に迷惑をかけたくない」と口にする。その気持ちは、家族全体に負の影響を与える。家族がそれぞれに抱える罪悪感が、生活の隅々に影を落とす。


支援制度や助成を活用しても、カバーしきれない部分がある。例えば、高額療養費制度で大きな負担が軽減されたとしても、すぐに支払いが必要な医療費や交通費は家計に直接響く。制度の存在はありがたいが、実際の現場では限界を感じざるを得ない。


お金がないことが原因で、治療を遅らせたり諦めたりすることも現実には起きている。治療を受けさせたいという家族の気持ちと、お金のやりくりが折り合わないとき、どちらを優先すべきかという問いが否応なく突きつけられる。この葛藤は、誰もが経験するべきではない苦しみだ。


医療費は、家族の暮らしそのものを形作る重要な要素だ。健康のための出費が、家計全体を不安定にする現実。それは、一家の生活基盤を揺るがし、経済的な不安がさらに新たな病を生むという悪循環を生み出している。この重みを、どうすれば軽くできるのか。それを模索する日々が続いている。

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