02
お昼時になるとホールはアルバイトさんにお任せして、私はキッチンに入って雄一と分担しながら料理を作る。
お昼のピークを過ぎるまでは目が回る忙しさで大変だけど、お店が賑わっているのはとてもありがたいこと。
ピークを過ぎてからアルバイトさんを交代で休憩させて、私はまたホールに出る。
「莉子、先昼飯行くか?」
雄一が気をつかって聞いてくれるけど、雄一こそ働きづめだから先にお昼ご飯を食べたら良いと思う。そうやって言えば、「俺はキッチンで摘んでるから問題ないよ」とニカッと笑った。
「じゃあ私も、そうする」
「無理すんなよ」
「ありがと」
雄一は、調理師専門学校時代の同級生だ。
ソレイユを継ぐと決めたけれど、祖父が引退すると共に祖母も辞めてしまったし、キッチンは私一人になった。さすがに一人では無理だ。
長年働いてくれているアルバイトの千景さんは残ってくれたけれど、他は辞めてしまった。
ソレイユを継いだと思ったのに、ゼロからのスタートと一緒だった。
「求人、出してみたらどう?」
「確かに、そうですね」
「少しずつ、頑張っていきましょうね」
「千景さん、ありがとうございます」
千景さんにアドバイスされて、求人情報を載せたり、調理師専門学校時代の友達にも誰かいないかと連絡を取った。
そんなときに現れたのが、同級生の久保雄一だった。私が友達に連絡した情報が、雄一にも伝わったのだろう。彼はちょうど転職先を探していて、カフェで働きたいと思っていたところだったらしい。
学生の時は同級生というだけで、全然話したことはなかった。でも面接に来てくれた彼はとても爽やかで感じが良く、経歴も申し分なかった。
「一緒にソレイユを盛り立てていきたい」
そう言われて嬉しかったことを覚えている。
キッチンに入ってくれる即戦力が見つかり、私も千景さんも一安心だった。だからといってすぐに経営が軌道に乗るわけでもなく、経営者がかわることでお客さんが離れてしまったことも事実。それでも、祖父の代からの常連のお客様にも助けられながら、ソレイユは生き残ってきた。
そしてその間、私と雄一の関係は、雇用主と従業員という立場から友人に代わり、ソレイユを一緒に盛り立てていく戦友へと変化していった。
一年も過ぎる頃には、私はすっかり雄一のことを信頼しきっていた。
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