まともなやつはいないのか(23首)

落ちていたバナナの皮が黄色から真っ黒になるその境の日


ひとんちの玄関ポストに本心が含まれてない書類を入れる


ニワトリが鶏舎にあふれパソコンが得意と自負している社会人


ハイターを忘れたお湯に30分漬かってできたぬるい台拭き


まともなやつはいないのかって怒られてうーんと思う 蒙古タンメン


共通の話題は健康診断のぼろぼろのとこ あたたかな冬


秀吉の草履の話をあの人も意識しながら働いてるな


マジシャンのような手つきで預かった昼食代を小箱に入れる


やむを得ずピンクの鞄を持っている公共の場の公共の空


笑点のあまり笑いが聞こえない回で不安を紛らわせたい


死にたいな買い物かごの底に敷く高くて薄い肉のおつまみ


巡回で会う人がみな善人と決めつけているような時給だ


落選の方には別途通知等いたしません、の表記の温み


母の日のフリー画像のどの母もエプロンを着て微笑んでいる


割り箸が机の中でかびているあなたもここを通ったでしょう


脳みそにあえてチップを入れずともわたしは従う気で動いてる


インボイスが思い出せずにマイナンバーマイナンバーと叫べばひとり


保冷材の今日一日があたたかいものになりますように。がんばれ


気がつくとトンネルのなかにいる電車どうりで繋がらないと思った


ポイントを自分のものにするくらいお好きにどうぞ 月が大きい


あと一人乗れたとしてもわたしではない方がいいお先にどうぞ


そのような者は弊社にいませんの兵士の部分 いつかどこかで


牡蠣剥きの帽子のような雲を見る 仕事と名のつく全て辞めたい

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