人間の処遇について
憑弥山イタク
人間の処遇について
「人間増えすぎたし、そろそろ数減らさない?」
皿に盛った一房の葡萄を平らげると、一際幼い外見をした女神"ロリ"が言った。その場に居た全員が、少し悩みつつも、次々とロリの発言に対する持論を述べた。
「確かに、数が多い。それに誰も彼もが秩序から逸脱し、随分と堕落した生活をしている。この辺が限界かもしれんな」
生の鶏胸肉をかじりながら、一際筋肉の発達した男神"マッスル"が最初に賛同した。
「ウチは反対かな〜。誑かす男が居なくなるのはちょっと寂しいかも〜」
皮を剥いたバナナを食べながら、一際色気のある女神"ボイン"が反対した。
「僕は賛成。不貞に不純……そろそろ人間も綺麗にするべきだよ」
無花果を食べながら、一際クールながら幼い容姿の男神"ショタ"が賛同した。
3対1。ボイン以外の全員が、人間の削減に関して意見が一致した。多数決により、人間の個体数減少を目的とした裁きの実施……を前提とした会議が開かれた。
「疫病振り撒くってのはどう? 人間なんて次々しんじゃうよ?」
「疫病なんて撒いたら生かすべき人間まで死んじゃう可能性が出てくるよ」
ボインの発案を一蹴したショタが、次なる案を提示した。
「生かすべき人間だけを隔離して、地面全体を焼けばいいんじゃない?」
「雨が降れば終わっちゃうよ、それ」
ショタの発案もロリにより一蹴され、次はロリが提示した。
「洪水でも起こしちゃえば? 生かすべき人間を船にでも乗せちゃえば、後は水が引くのを待つだけだし」
「人間を全滅させる洪水なんて、水が引くのに何日かかると思ってる」
ロリの発案もやはり一蹴され、最後にマッスルが提示した。
「戦争を起こせば、人間同士が勝手に殺し合う。災害を起こす必要は無い」
「確かに数は減るけど、人間は途中で辞めちゃうと思うよ〜? 人間って飽き性じゃん?」
一周まわってボインが一蹴してきた。4人全員が発案と一蹴を終えたところで、最も妥協点に等しい意見を反映させることにした。
「では今から、多数決を取ります。ご自身以外の意見で、最も適切だと思う案に挙手してください」
誰に対しても中立である者が必要……ということで、男性とも女性とも解釈できる顔つきと長髪の中性神"フタナリ"へジャッジを委ねた。結果的に妥結した案は、ロリの「洪水」であった。
妥結に先駆け、フタナリが軸となり、洪水案の安定した実行を計画した。フタナリによれば、洪水には人間だけでなく動物も数を減らしてしまうが、生かすべき人間と共に船へ載せてしまえば、動物の絶滅には至らない。洪水が収まり次第、生かすべき人間と共に繁栄していける。
ただ、船を用意するのはロリでもフタナリでもない。生かすべき人間に造船を課す。決して怠けず、堕落せず、己とその家族、そして動物達を載せられる巨大な船を作り上げられるかどうか。並大抵では至らぬ技量と信仰心がある……ことを前提に、今度は生かすべき人間を決めなければならない。
幾百、幾千、幾万の人々から、生かすべき人間としての理想像を見つけなければならない。無論、一人一人の品定めが必要である為、神と言えど手間と時間と手間と手間が重なる。
人間の削減を試みた神々だったが、神々がノアという1人の男を見つけるまで、まだまだ時間がかかりそうであった。
人間の処遇について 憑弥山イタク @Itaku_Tsukimiyama
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